暁のヨナ 〜優しき緑の光〜
□第二話:新たな世界
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蜜香は落ちる感覚で目を覚ました。
どうやら自分は、マンションの屋上から身を投げ出した時と同じように、落下しているらしい。
嗅覚からは、潮の香りが感じられる。
今自分は、海に向かって落下しているのだ。
頭の中でそれらを順に理解し終えると、小さく溜め息を吐いた。
このまま落下すれば、自分が当初望んでいた結果になるだろう。
始まる前に終わってしまう新たな世界に蜜香は再度目を閉じた。
…が、しかし。
いくら待てども海面へ激突する衝撃は訪れない。
いや、寧ろ、落下していた筈の体は何者かの腕に抱かれ、風を切って移動している。
再度頭の中で現状を順々に理解していると、頭上から言葉が降ってきた。
「…やれやれ。僕はこの十数年、阿波の町を飛び回っていたけど、雨が落ちてくる事はあっても可愛らしいお嬢さんが落ちてくるのは初めてだよ。喜ばしい事だけどね。」
『(…この声は…)』
蜜香は聞こえてきた声にゆっくりと目を開けると、その美青年と目が合った。
美青年はウィンクをしながら微笑を浮かべ言葉を発する。
「初めまして、空から舞い降りてきた可愛らしいお嬢さん。僕はジェハ。美しき海賊だよ。」
蜜香は目の前の美青年…ジェハの顔を暫く見つめると、ポツリと呟く。
『…………緑龍……』
「……っ!?」
蜜香は小さくそれだけ呟くと再び気を失った。
ジェハは彼女の呟いた言葉に動揺を隠せずにいる。
ー…『…………緑龍……』…ー
「(……この子は…一体…)」
問おうにも、彼女は気を失ってしまった為、聞き出す事は不可能。
ジェハは小さく溜め息を吐くと、自分が身を置く海賊船へと向かった。