暁のヨナ 〜優しき緑の光〜

□序章:さようなら、現世
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この世界は、残酷で醜いー…。


ー…「森咲さぁん、この書類、やっといてくれる?貴女、仕事が早いからこんなのわけないわよね?」…ー


プライドの高い人間は、自分より格下に思っていた者の能力が高い事を知ると、蹴落とそうと牙を剥く。


ー…「あぁっ!ごめんなさぁい。手が滑ってコーヒー零しちゃったわ。書類が汚れちゃったわね。まぁ、すぐに作り直せるでしょ?貴女なら。」…ー


それに抗えば、首筋に牙をたてられる。


ー…「なぁに?その目。私に楯突く気?誰がこの3年、アンタみたいなヤツを教育してやったと思ってるの?」…ー


私は何度も牙をたてられ、涙(ち)を流した。


ー…「アンタ、本当にムカつく人間ね。弱いヤツは弱いヤツらしく、黙って私に従えば良いのよ。」…ー


助けを求めても、誰も助けてなんかくれない。


ー…「…ごめん、蜜香。私、あの先輩に目を付けられたくない。」…ー


上司も黙って見て見ぬ振り。


ー…「池岡君の指導が余りにも度を越し過ぎている?あっはっは。君を立派に育てる為に、心を鬼にしてくれているんだろう。森咲君も池岡君に報いる為に、もっともっと精進したまえ。」…ー


誰も私の話しを聞いてくれない。


ー…「悪いけど、今忙しいんだ。またにしてくれるかな。」…ー


誰も私を見てくれない。


ー…「何、アンタ居たの?存在感薄過ぎじゃない?…てか、邪魔なんだけど。どいてくれる?」…ー


私が、何をしたと言うの?


ー…「ちょっと仕事が人より出来るからって偉そうなのよ、アンタ。目障りだから。」…ー


皆と変わらず、普通にしているだけなのに、どうしてこんな目に合わなきゃいけないの?


ー…「私は出来ますよってアピールしてんの?うわ、最低。」…ー


じゃあ、努力を辞めれば良いの?


ー…「森咲君…きみ、最近たるんでるんじゃ無いか?最初のやる気はどうした?今のきみははっきり言って、会社のお荷物だよ。やる気が無いのなら辞めてくれて良いんだよ。」…ー


あぁ、ここに私は必要無いんだ。


ー…「…ふーん…退職届…ね。分かったよ。3年間、どうもね。もう帰っても良いよ。」…ー


私は、必要無い。


ー…「森咲さん、退職届出したんだってね!これで貴女の顔を見なくて済むと思うと、清々するわ!さようなら、役立たずさん。」…ー


もう、疲れた。


ー…「蜜香、辞めるんだね。新しい職探し、頑張って。」…ー


この残酷な世界に生きる事が。


だから。


『…うん。さようなら。』


私はこの世界から、離脱する。
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