夢 時巫女シリーズ―テラ―ヒロアカ
□磁石
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「かわいそうに。」
「あんなに小さいのに。」
線香の匂い。
あんなに静かだった家には、囁きと、ざわめきと、黒い人ばかり。
私の両親の葬式。
2人はまだ帰ってきていないのに、骨の一つも見つかっていないのに。
「あの子…どうするのかね?」
「どうするって…」
「これからさ、ほらこの家も…」
「知らないの?施設よ、施設。
なんでもあの子個性が。ねぇ…」
「しかたのないことよ。」
私の家はこんなに広いのに、とても息苦しい。
それから私の家は遠い親戚の物になったらしく、私は知らない大人と新しい寝床へ。
ご飯を食べて、勉強をして、寝る。
小さい子供と一緒に、寝たり起きたり。
生きてきた中で一番つまらない日々。
乾いた地面でひたすら焦げていく気分。
いつかからからの干物になって、線香の煙になって、知らないどこかへ飛んでゆく。
そんなふうになってしまうのかな。
砂になって、体は消えてしまうのかな。
ただひたすらに怖くて、両親の帰りを待った。
その三日後、私は新しい母親と小さなアパートで暮らすことになる。
これから生きてきた中で一番素敵な出会いがあるのを、干からびるのをひたすら待った小さな私はまだ知らない。