『届かない真実』 完結
□8.悲鳴
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* *
「うっ、ゲホゲホ……」
気が付けば、誰もいなかった。
空は暗い。おそらく、6時を回っているのだろう。
軋む体を起こそうと試みるが、力が入らず、立てない。
骨は折れてなさそうだし、ヒビも入ってはいなさそうだから、ただの痛みだけだろう。
「はぁー、うっ」
ゲホゲホッ
リョーマは思いっきり咳き込んだ。
口から血が吐き出され、芝生を汚した。
「……また……なの?」
――――もうやだよ………
どれだけ辛くとも、涙は出ない。
少し朦朧とする頭で、どうやって帰ろうか悩んだ。
しかし……
「そういや、今日は家、誰もいないんだっけ……」
いとこは学校で合宿、両親は用事があって、家にいない。
リョーマを連れていきたかったのだが、リョーマが学校に行きたいといったので、泣く泣く諦めたのだった。
それでも、今朝家を出る直前まで、一緒に行かないか聞かれた。
「なら、ゆっくりでいいや」
リョーマはそう結論を出すと、ごろんと寝返りを打った。
葉の間から月の光が入ってきて、きれいだった。
このまま寝てしまおうかと思たが、明日も学校があるため、一度家に帰らないといけない。
………傷の手当てもしないといけないし。
クラスでもどうせ、イジメられるのだから、このままでもいいのかもしれないけど。
先生も見て見ぬフリ……下手したら、イジメ側に加担してるし。
それから30分ほどして、リョーマは痛む身体でテニスバッグ(隠していた)を担ぐと、足を引きずりながら帰った。
9.違和感