『届かない真実』 完結

□8.悲鳴
2ページ/2ページ



   * *


「うっ、ゲホゲホ……」

気が付けば、誰もいなかった。



空は暗い。おそらく、6時を回っているのだろう。

軋む体を起こそうと試みるが、力が入らず、立てない。

骨は折れてなさそうだし、ヒビも入ってはいなさそうだから、ただの痛みだけだろう。


「はぁー、うっ」


ゲホゲホッ


リョーマは思いっきり咳き込んだ。


口から血が吐き出され、芝生を汚した。


「……また……なの?」





――――もうやだよ………





どれだけ辛くとも、涙は出ない。

少し朦朧とする頭で、どうやって帰ろうか悩んだ。

しかし……


「そういや、今日は家、誰もいないんだっけ……」

いとこは学校で合宿、両親は用事があって、家にいない。

リョーマを連れていきたかったのだが、リョーマが学校に行きたいといったので、泣く泣く諦めたのだった。

それでも、今朝家を出る直前まで、一緒に行かないか聞かれた。


「なら、ゆっくりでいいや」


リョーマはそう結論を出すと、ごろんと寝返りを打った。


葉の間から月の光が入ってきて、きれいだった。

このまま寝てしまおうかと思たが、明日も学校があるため、一度家に帰らないといけない。

………傷の手当てもしないといけないし。



クラスでもどうせ、イジメられるのだから、このままでもいいのかもしれないけど。

先生も見て見ぬフリ……下手したら、イジメ側に加担してるし。





それから30分ほどして、リョーマは痛む身体でテニスバッグ(隠していた)を担ぐと、足を引きずりながら帰った。



9.違和感
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ