NARUTO短編集1

□バレンタイン
2ページ/3ページ



「さあ、はりきって作るわよ!!」
サクラの元気な声が、目の前から聞こえた。サクラの隣にはいのもいる。
フリフリのエプロンをつけ、こぶしを振り上げる姿にため息が出た。
そう言うナルトも、無理矢理渡されたエプロンを身に纏っている。
ナルトは、何故こうなったのか、思い返した。
あれは確か、任務を終わらし、チョコを買うために店に行こうとしていた時だった………。










**


チョコを売っている店の前をうろついていたが、何処もいっぱいで、入る気すら失せていた時、
「あれ?ナルトじゃない。」
「どうしたの?」
『サクラちゃん、いの……。』
声を掛けられ、振り向くと大量の袋を持った二人が立っていた。


『えーっと……。』
「チョコ買いたいの?」
ナルトがなんと言おうかと、言いよどんでいると、にっこりサクラが言った。

「手作り?」

『え……う……あ……ぅ………///』


だんだん真っ赤になっているナルトの顔。
サクラといのは、それを可愛いと思いながら顔を見合わせた。

「いいわ。私たちもこれから作るの。一緒に作りましょう。」
「そうよナルト!材料は大量にあるから!」

ナルトはそう提案する二人に、顔を上げた。
確かに、何人に作るんだ!?というぐらいのチョコが二人の持つ袋の中にある。

『でも………。』
「それに、今からじゃチョコも売り切れてるわよ?」


まさにその通りなのだが、ナルトはまだ躊躇っていた。
しかし、サクラの言葉に、いのが問答無用でナルトの腕を掴んだ。

「「だから、行きましょう!!」」
『………………。』

ナルトに拒否権は与えられなかった。

二人に引っ張られるようにして、連れて行かれるナルト。
そんなこんなで、一緒に作ることになってしまった。





よって、今の状況ができてしまったのだ。
しかし、この後、ナルトは断らなかったことを後悔するハメになる…………。
それを知らないナルトは、ため息をつきながら、差し出されたエプロンを付けた。









「ナルトは何を作るの?」
『トリュフ。その他諸々だってばよ。』

材料や器具を用意しながら答えるナルト。
その手は止まることなく、テキパキと用意している。

『二人は何を作るんだってば?』

「「フフッ。内緒。」」

『…………そう……なんだってば………。』

二人の言葉に、若干顔を引きつらせたナルト。
そして、二人の手元を見た瞬間、顔を背けた。


『(なんでチョコと一緒にタバスコやからしがあるんだ!?)』


思わずあれを食べさせるであろうサスケを同情した。
そして、見なかったことにした。


「「さあ!作るわよ〜〜〜!!」」


二人の気合いの入った声に、ナルトは地獄への招待状を突き付けられた気がした。










いよいよチョコづくりが始まった。

ナルトは自分のチョコ作りに集中する。
チョコを湯煎にかけ、温度を調節しながらテンパリングしていく。
その手つきは、プロそのものだった。


『ふぅ〜〜〜〜。』


あっという間に生チョコが出来上がった。
あとは、冷蔵庫で固まらせて、チョコをコーティングして、飾り付けをするだけ。
その間10分だった。

『サクラちゃん、いの?』
いつもならうるさい二人が、ものすごく静かなことに気付いたナルトは、一息つくと同時に、顔を上げた。
『っ!?』
目の前の光景に息を呑むナルト。

それはまさに、地獄絵図だった。

ただ、血の色がチョコ色に変わっているだけで…………。

『っ!いの!?何やってるってば?!』
「え?チョコを溶かしてるけど……?」
『直火でやっちゃダメだってば!!』
いのの手元を見たナルトは、驚いた。

直接チョコを鍋に入れ、火に掛けているのだ。慌てて止めさそうと叫ぶナルト。
『チョコを溶かす時は湯煎で!生チョコなら、生クリームを一瞬沸騰させて、火を消してからチョコを入れて!!』


バンッ


「キャ─────!!」


バンッ


『何だ!?爆発!?』


いのに注意していたら、急に爆発が起こった。サクラの叫び声は、二度の爆発音によって、かき消された。
本気で驚いたナルトは、反射的にクナイを取り出し構えようとホルダーに手を伸ばす。
しかし、いのやサクラがいるのを思い出して、慌ててその手を止めた。

『(何でチョコ作りで爆発すんだよ!!何がどうなってやがるんだ!!)』

ナルトは、心の中で思いっきり叫んだ。頭を抱えはしなかったが、今すぐにでも帰りたい気持ちでいっぱいだった。











その後、ナルトチョコ作り講座が開かれた。

まず、チョコを溶かすには、湯煎で!絶対に直火に何十分もかけない!
次に、チョコにタバスコやからし、おかかはいれない!玉子はレンジしない!など……。



ようやく二人がまともなモノを作り終えた頃には、日がだいぶ傾いていた。
『(や、やっと終わったー!!)』
自分のを作り終えて、サクラ達に教えて。
ナルトは疲れ果てていた。肉体的によりも、精神的に。


「「〜〜〜〜〜。ナルト!!ありがとう!!」」
『アハハ………。』


二人の感謝の言葉に、ナルトは演技ではなく、素で乾いた笑みを漏らした。
二人のチョコを味見したが、ちゃんと食べられる。人間の食べ物だ。死にはしない。うん。

『(この後って、任務だっけ?早く帰らないとなあ………。)』

二人が盛り上がってるのを何となしに見ながら、ナルトはため息をついた。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ