『Lost and Rescue〜囚われた心〜』 完結

□第1部 脅かされる心6
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「越前の奴、遅れてくるんスか?」









氷帝との練習試合の日。

新レギュラーの中にリョーマの姿はなかった。



「あぁ、竜崎先生が後から連れてくるそうだ」

「……大丈夫なんスか?」



倒れたのはあの日だけだったが、あの日からリョーマの体調は良くなかった。

風邪をひいたときのような感じではなく、どこか精神的に苦しんでる感じで……







「よぅ、手塚。今日はよろしく頼むぜ」

「跡部か……。こちらこそ、頼む」



氷帝の部長、跡部の後ろには(変わり映えのしない)レギュラーメンバーが揃っていた。



「おい、お前らの1年ルーキーってどいつだ?」



見た感じ、全員知ってる顔ばっかだが……



素直に疑問を投げかけてくる跡部に、手塚はいや……と言葉を濁した。



「あとから来るらしいよー。たぶん、怖くなって竜崎先生が迎えに行ってるんじゃない?」



棘ある菊丸の言葉に、桃城・海堂・手塚は眉をひそめて険しい顔をする。

氷帝の方も怪訝そうな顔で青学を見ていた。



「なんだ?3年とルーキーは険悪なのか?」

「……ハァー、えち……1年の割にずいぶん強い奴なんだ」

「センパイたちはそれが気に食わないらしくって……」

「1年でレギュラー戦に出たからな……」

「「「ハァー」」」



呆れ混じりの溜息をつく3人に、跡部は大変だな、と苦笑するしかない。



「ちなみにそいつが女ってホンマ?」

「忍足……」

「えー、気になるやん。で、どーなん?」

「テニス界から許可もらって男テニに入ってるんだってな?」

「宍戸……お前もか」



興味津々と言った風な氷帝に、手塚たちも苦笑する。

確かにリョーマの存在は前代未聞だろう。



「まぁ、アイツが来たら分かる。ただし、約束してくれ」

「あ?」

「むやみにアイツに構うな。できるだけ一定の距離を空けて話すようにしてくれ」



真剣な顔でそう話す手塚に、氷帝はお互いの顔を見合わせた後、疑問に思いながらも頷いた。

色々と訳ありなのだろう。






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