『Lost and Rescue〜囚われた心〜』 完結
□第1部 脅かされる心5
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手塚との野試合から10日。
2.3年は相変わらずだが、桃城と海堂は事あるごとにリョーマに構っていた。
ストレッチもどちらがやるかケンカになるし、練習のペアもリョーマをはさんでケンカになる。
まぁ、大抵はそれを手塚が助けて、リョーマは手塚とペアを組むのだが……。
「あっ、また一人だ……リョーマ君………」
1年は不思議そうに……けれど寂しそうにリョーマを見ていた。
レギュラーになったリョーマだが、着替えの関係上もあるからと、1年と一緒に後片付けに参加している。
最初は全く気付かなかった1年だが、ふと気になって周りを見回した時、気づいたのだ。
偶然かと思ってその日はそれで終わったが、次の日もその次の日も同じだった。
「リョーマ君、僕たちと一緒にいたくないのかな?」
後片付けを始めると、必ずリョーマは1年たちがあまりいない場所から片付け始める。
片づけをしないわけじゃないのだ。
ただ……距離を感じる。
それは何もテニス部だけじゃない。
授業と授業の間の休憩時間も、常にリョーマは一人だった。
女子とはそれなりに話しているようだから男子と話すのが恥ずかしいのかもしれない。
(忘れそうになるが、リョーマは女だ)
と思ったが、そうでもなさそうな感じもする。
もう一つ気になったのは決してリョーマから人に触れることはないということ。
だからハイタッチとか絶対にしない。
これは女子に対しても同じだった。
「リョーマ君、触れられるのも嫌いなのかな?」
肩をトントンとたたいた時、ガンバレよって言って腕をたたいた時。
リョーマの身体が一瞬、ビクッと震えるのだ。
まだ後ろからや横から、リョーマが見えない死角からの接触はそれだけですんでいる。
一度、目の前から抱き着こうとした女子がいたのだが、その時リョーマは小さく息を呑んで一歩下がったのだ。
まるで恐怖に堪えるように真っ青になった顔。
震える身体を止めようと、自分の手を背中で握りしめてた。
それから1年の間ではリョーマに抱き着こうとしたり、リョーマが見えるところからの接触は極力しないことが暗黙の了解になった。
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