『君が笑顔でいるために』 完結
□2.Entrance
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桜が舞う4月。
ここ―――青学こと青春学園では入学式が執り行われていた。
上級生の姿はほとんどない。
新入生が体育館に並ぶ中、空席が一つあった。
まだ誰も名前を知らない新入生の席………。
そして、入学式が行われているのと同時刻。
一人の少年が空港に姿を現わした。
テニスバッグを背負い、凛と立つ姿は周りの視線を集めている。
「This is japan!」
流暢な英語が少年の口から漏れた。
アーモンドのような大きな瞳は、期待に満ちた光を宿している。
「どこにいきましょう?」
「Seigaku……OK?」
タクシーに乗り込んだ少年は、運転手にそう答えると、それ以上は口を開かず、窓外を眺めた。
流れる景色に、柔らかな笑みを浮かべる。
ルームミラーでそれを見た運転手が真っ赤になったことにも気づかない。
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