『壊れてしまう前に…』 完結
□8.訪問
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―――プルルル
「はい。アーン?手塚じゃねぇーか。どうした?」
"跡部か。少しいいか?"
「ああ」
"すまないが、リョーマの様子を見てきてほしい"
「アーン?なんかあったのか?」
"リョーマたちがドイツに来たんだが………、リョーマの顔色が少し悪くてな"
「……どういうことだ?」
"分からん。ただ不安定になってるようだった。本人は隠してるみたいだったが……"
「発作は出てねぇーのか?」
"まだ、な。だが、少しその兆しがあったから……"
跡部は唇をかんだ。
まだやるべきことは残っている。
けれど、そちらにばかり気を取られて、リョーマの様子を見ておかなかったことを後悔した。
今のリョーマはほんの少しの衝撃で心が悲鳴を上げてしまうのだ。
それを知っていたのに……
「明日、一度見てくる。もしもの場合、休ませるぞ?」
"構わない。リョーマの身体を最優先にしてくれ"
「ああ……早く戻って来い」
"分かっている。こんな遅くにすまないな"
確かに、よく見ればすでに1時だ。
普通なら寝ていてもおかしくはない時間。
「気にするな。じゃあな」
電話を切ると、跡部は荒々しくソファーに腰かけた。
明日は何をおいても青学に様子を見に行く。
そう決意して、残りの書類に取り掛かった。
―――この時は、まさか会えないとは思ってなかった。
時間は刻々と迫っている・・・
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