『壊れてしまう前に…』 完結
□7.日本
1ページ/5ページ
一週間は早かった。
明日にはもう日本に戻らないといけない。
「リョーマ、少し話しない?」
クリスに呼ばれて、少し離れた公園へと足を運んだ。
そこには、日本みたいにテニスコートがあった。
「"リョーマ、あなたの力はあんなものではないのでしょう?"」
「"……気づいてたんだ"」
噴水の側まで来た二人は、顔を合わせず、跳ねる水を見ていた。
「"なぜ……と聞いても?"」
「"約束だから。俺が日本でテニスをするための………"」
日本なら、そこまで有名じゃないから、人に囲まれることはない。
心の安定を保つためには有名になっては意味がないのだ。
……理由はそれだけじゃないけど。
「"……まだその時じゃない。もちろん、負けるつもりはないから、力を解放するときもあるけど……"」
「"そこまで力を出さずとも勝てる?"」
「"……うん……。すべてを封じた今の状態でも勝てることが多い。その代わり、すべて本気でやってるけどね……
一時は、今の状態で本気になりすぎて、もう少しでテニス禁止を言い渡されるとこだった"」
笑いながらいえば、クリスも笑ってくれた。
しんみりは嫌い。同情も嫌い。
だから、クリスみたいに正面から受け止めてくれる人はうれしい。
「いつか本気のあなたと戦いたいわ」
「……いつか、ね」
握手を交わして部長たちの元に戻った。
久しぶりに心が柔らかな音を立てていた気がしたのは、きっと気のせいなんかじゃないだろう。
・