『壊れてしまう前に…』 完結
□5.前兆
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ピリリリ………
目覚ましの音に、意識が浮上していく。
「……ん……う――」
眠たくて仕方がない。
しかし、今日からは迎えも来てくれる人がいないから、
自分で起きるしかない。
「あーうー……」
呻きながらも頑張って体を起こした。
カルピンが駆け上がってくるのが見える。
「おはよう……カルピン」
「ほらあ」
カルピンを抱き上げて下に降りる。
もう家に来るセンパイはいないから、朝慌てて着替える必要はない。
男にはないふくらみを持つ体で食卓に着いた。
「いただきます」
女の姿のまま朝食を食べるなんて久しぶりだ(夜は女の姿)。
セットしていない髪は、動くたびにさらさらと揺れる。
もしこんな姿を見られたら、どうなるだろう。
「……絶対、叫ぶだろうね」
男だと思っていた奴が、実は女だった、なんて……
「ごちそうさま」
すべて食べ終えると、リョーマは足に纏わりつくカルピンをおいて、行く準備をし始めた。
長い髪を落ちないように中に入れて、短髪にしていく。
「結局、短くするんだから切らせてくれたらいいのに」
せめて髪だけは、と切ることは許してもらえないのだ。
だから、毎朝髪をセットするのに時間がかかってしまう。
……遅刻の原因の一つだったりする……
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