『壊れてしまう前に…』 完結

□5.前兆
1ページ/5ページ



ピリリリ………


目覚ましの音に、意識が浮上していく。


「……ん……う――」


眠たくて仕方がない。

しかし、今日からは迎えも来てくれる人がいないから、
自分で起きるしかない。


「あーうー……」


呻きながらも頑張って体を起こした。

カルピンが駆け上がってくるのが見える。


「おはよう……カルピン」

「ほらあ」


カルピンを抱き上げて下に降りる。

もう家に来るセンパイはいないから、朝慌てて着替える必要はない。

男にはないふくらみを持つ体で食卓に着いた。


「いただきます」


女の姿のまま朝食を食べるなんて久しぶりだ(夜は女の姿)。

セットしていない髪は、動くたびにさらさらと揺れる。

もしこんな姿を見られたら、どうなるだろう。


「……絶対、叫ぶだろうね」


男だと思っていた奴が、実は女だった、なんて……





「ごちそうさま」


すべて食べ終えると、リョーマは足に纏わりつくカルピンをおいて、行く準備をし始めた。

長い髪を落ちないように中に入れて、短髪にしていく。


「結局、短くするんだから切らせてくれたらいいのに」


せめて髪だけは、と切ることは許してもらえないのだ。

だから、毎朝髪をセットするのに時間がかかってしまう。






……遅刻の原因の一つだったりする……




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ