『届かない真実』 完結
□14.記憶
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リョーマと出会ったときは、ずいぶん幼いころで、覚えてないんだ。
でも、もともと僕たちの親が知り合いだったらしく、リョーマが生まれたとき、見に行ったことがあるんだって。
で、リョーマが3歳、僕たちが5歳の時、再会したんだ。
もともと、リョーマたちは日本にいたからね………
* *
「初めまして。幸村精市です」
「跡部景吾だ。よろしくな」
「……越前……リョーマ」
母親の後ろに隠れて、そっと様子をうかがうリョーマを見て、はじめはただの人見知りだと思ってた。
しかし、それが間違いだと気づいたのは、1週間後のことだった。
‶子供は預かった。助けたくば、10億用意しろ"
遊びに来ると、リョーマはおらず、代わりに身代金の電話がかかってきた。
「またなの!?どうして……っ」
リョーマの母親は泣き崩れ、父親は警察に連絡していた。
どうしていいのか分からず、二人は玄関で固まっていた。
「リョーマ……リョーマ!!」
泣き叫ぶ声にようやく我に返った二人は、家に連絡を入れ、リョーマの捜索を開始した。
そして2時間後・・・
「リョーマ!!」
リョーマは見つかった。
しかし、無傷ではなく、顔以外のあちこちに痣があった。
「どうして……」
それから南次郎に聞かされたのは、リョーマが唯一、工藤家を継げる者で、それを狙う奴らがいるということ。
工藤家は、母親の実家だが、継ぐ気はなく出てきたらしい。
しかし一人娘が出ていけば、あとを継ぐ者はいない。
そこで、目を付けたのがリョーマだった。
娘の血のつながった子供。
誘拐は、金狙いの奴だけではなく、工藤家の者も含まれていた。
そして、南次郎の子供ということでも………
「そんな。じゃあ、リョーマはずっと狙われてたってこと……?」
「っ、そんな中にいたんじゃ、人見知りするのもおかしくはねぇーな……」
二人は眠るリョーマの手を握った。
まだ温かい。まだ、リョーマはここにいる。
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