『届かない真実』 完結

□14.記憶
1ページ/5ページ



リョーマと出会ったときは、ずいぶん幼いころで、覚えてないんだ。


でも、もともと僕たちの親が知り合いだったらしく、リョーマが生まれたとき、見に行ったことがあるんだって。



で、リョーマが3歳、僕たちが5歳の時、再会したんだ。


もともと、リョーマたちは日本にいたからね………






   * *


「初めまして。幸村精市です」

「跡部景吾だ。よろしくな」

「……越前……リョーマ」


母親の後ろに隠れて、そっと様子をうかがうリョーマを見て、はじめはただの人見知りだと思ってた。


しかし、それが間違いだと気づいたのは、1週間後のことだった。






‶子供は預かった。助けたくば、10億用意しろ"


遊びに来ると、リョーマはおらず、代わりに身代金の電話がかかってきた。


「またなの!?どうして……っ」

リョーマの母親は泣き崩れ、父親は警察に連絡していた。



どうしていいのか分からず、二人は玄関で固まっていた。



「リョーマ……リョーマ!!」

泣き叫ぶ声にようやく我に返った二人は、家に連絡を入れ、リョーマの捜索を開始した。




そして2時間後・・・


「リョーマ!!」


リョーマは見つかった。

しかし、無傷ではなく、顔以外のあちこちに痣があった。


「どうして……」


それから南次郎に聞かされたのは、リョーマが唯一、工藤家を継げる者で、それを狙う奴らがいるということ。


工藤家は、母親の実家だが、継ぐ気はなく出てきたらしい。

しかし一人娘が出ていけば、あとを継ぐ者はいない。


そこで、目を付けたのがリョーマだった。

娘の血のつながった子供。


誘拐は、金狙いの奴だけではなく、工藤家の者も含まれていた。


そして、南次郎の子供ということでも………



「そんな。じゃあ、リョーマはずっと狙われてたってこと……?」

「っ、そんな中にいたんじゃ、人見知りするのもおかしくはねぇーな……」



二人は眠るリョーマの手を握った。

まだ温かい。まだ、リョーマはここにいる。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ