『届かない真実』 完結
□3.命令
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パーンッパーンッ……
「越前!誰がラケットを握っていいといった!!命令が聞けないのかっ!!」
―――ガッ
「っ、うっ」
ドサッという音ともに、小さなリョーマの体は倒れた。
何かが頬を伝うのが分かった。
「?」
リョーマがそれに触れてみると、ヌルリとしている。
「(どうしてこうなんだろう………。急いで止めないと、親父にバレる……)」
そうなれば、今まで隠してきたことが、水の泡だ。
―――ゲシッ
起き上がろうとしたリョーマは、再び地面に転がった。
お腹が痛い。蹴られたのはいいが、痣になっている部分だったため、激痛が走る。
涙が出てきそうになるが、それに耐えるように固く目をつぶった。
今は、ただ相手が満足するのを、我慢しているだけだった。
最初は抵抗していたのだが、抵抗すればするほどに暴力はエスカレートした。
「(……やっぱり、人の考えることは同じなんだ……)」
あの人たちも……そして、先輩たちも……
できるだけ、力を抜いて下手に動かない。
それが、過去にリョーマが学んだことである。
―――バキッドカッグシャッ
殴る、蹴る、踏みつける
決して首から上は傷つけない。
リョーマは両腕だけを守り、あとはやられるまま、じっと我慢した。
どうせ、数分もすれば飽きて部活に戻っていくだろう。
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