NARUTO短編集1

□Birthday♪(Nver.) ☆
1ページ/2ページ



────誕生日は、人に祝ってもらうもの。
ケーキを食べて、プレゼントをもらう。
その日だけは、主役になれる。
────それを決めたのは誰だろう。





十月九日。慰霊祭前日。

里は異様な雰囲気に包まれていた。
悲しみに暮れる者、怒りを表す者、武器を持つ者。
そんな里人を眺めている者がいた。蒼い目が、見ていた。
何の感情も映していないその目は、まるで空のように澄んでいた。

「ナルト、3代目が呼んでる。任務だと。」
『ん。』

ナルトは、人が真後ろに現れたにもかかわらず、驚くことなく気のない返事を返した。

「ナルト?」
『別に。』
ナルトはそう返すと、里を一瞥して、瞬身の術で消えた。
後ろにいた人物、シカマルも里を一瞥すると、ナルトを追いかけるようにして消えた。


『何?じっちゃん。』
「ナルトか?」
火影は目の前に、音もなく現れた人影に、一瞬驚いたが、誰だか分かると、嬉しそうに笑った。
「任務を頼みたいんじゃ。期限が今日中まででのう。」
『ランクは?』
「A。もう一つは、SSSじゃ。」
『いいよ。』
ナルトはにこやかに笑いながら了承した。

「内容はこれに記しておる。」

『了解。』

ナルトは、火影が差し出した巻物を受け取り、目を通した。
火影はその様子を複雑そうに見つめている。ナルトは、それに気付きながらも、視線を一度やるだけで、何も言わない。
二本とも目を通したナルトは、それを全て燃やした。それは、灰すら残らない。

『んじゃ、行って来る。』
「気をつけるんじゃぞ。」
ナルトは頷くと、窓から飛び出した。

「窓は出口じゃ!はあ…………。」

火影の注意は、途中ため息に代わった。
この任務には理由がある。慰霊祭が近づくに連れ、ナルトの体には毎日のように何処かしらに傷をつくり、また増えているのだ。

原因は聞かなくても分かる。

ナルトは、それでも文句一つ言わず全てその身に受けていた。
それに堪えられなくなったのが、零番隊メンバーだ。


全員、火影に助けを求めた。自分たちでは手を出すことを許されていないから、と。


勿論、手を出すことを許さないのはナルトだ。
暴力を止めさせようとした彼らを、ナルトは視線だけで止めた。
ナルトに止められてしまっては、零番隊メンバーでは誰もナルトを助けることはできない。
だから火影はナルトに任務を与えた。


任務で里外に出せば、少しでもナルトが傷つかずにすむ。


それは、何の解決にもなってないことは、火影も分かっている。
それでも、ナルトが傷つくよりはマシだ。
火影はイスから立ち上げると、ナルトが飛び出した窓から空を見上げた。

愛おしい金色の子供の眼と同じ澄んだ蒼い空。

火影は、少しでもあの子が幸せだと思える日になることを、少しでも本当の笑顔が増えることを祈った。
そして、その気持ちが金色の子供に伝わることを…………。










『じいちゃんも、あいつらも心配しすぎ。』


火影の思いは、金色の子供には十分と言うほど、伝わっていたようだ。
もちろん、あいつらというのは零番隊のメンバー。
ナルトは、変化もせず、黒いマントをを被った状態で木の上にいた。
マントに付いたフードは、綺麗な金色の髪をすっぽりと埋めてしまう。

任務内容は、敵の殲滅が2つ。AとSSS。ランクが全然違うにもかかわらず、ナルトの様子はいつもと変わらない。

『さて、お出ましか。』


まずは、Aランク任務から。


ナルトは、艶妖な笑みを浮かべると、狐の面をつけた。
そのまま、黒い影に、ちらちら見える金糸を纏った少年は、見えなくなった。










ナルトが任務を遂行している頃………。


「おい、めんどくせー。早くしろ!」
「分かってる!!」
「二人とも声が大きい。サスケ、黙れ。」

「「ネジはもっと急げ!」てか、俺だけ名指しにするな!」

「慧、そっちは?」
「無視かよ!!」
「できてるぞ。サスケ、その後ろのを取ってくれ。」
「これか?」
「ああ。」
「慧も急げよ?めんどくせーが、ナルトの奴が帰ってきちまう。」
「シカマル、落ち着け。火影様が別の部屋を用意してくれている。ナルトがここに来ることはない。」
「慧、いつの間に?」
「ついさっき、だな。火影様もグルだぞ?」


「「「本当にいつの間に………。」」」


「ほら、呆けてる場合か?時間がないぞ。ナルトが帰ってくる前に終わらさないと。気付かれたら意味がないからな。」
「ああ。」
「おう。」
「そうだな。」










カーン──………シュッ───………


『つまんな。SSSランクっていうから期待してたのに。』

ナルトは周りを蒼い炎で燃やしながら、呟いた。フードは終わった瞬間に脱いでるので、金色の髪が付きに反射してキラキラ輝いている。
その場所だけ世界が違っているような感じだ。

『任務終了。帰ろ。』

ナルトは何も残ってないのを確認すると、気配もなく消えた。










*火影邸*


『何ニヤけてんの?』

「ナっ、ナルト!?」
『うるさい。』

音も気配もなく現れたナルトに、火影はイスから飛び上がった。そんな火影を、ナルトは冷めた目で見ている。
「に、任務は?」
『終わった。手応えのない奴らばっかりだったな。』
「そ、そうか………。」

Aランクと、SSSランクの任務で、手応えないと言うのはナルトぐらいだろう。

『んじゃ。』
「ま、待つのじゃ!ナルト!!」
普通に、部屋を出ていこうとするナルトに、火影はストップをかけた。
止められたナルトは、内心驚きながらも表情には出さずに振り向いた。

ナルトは、二日前から火影邸の地下の部屋に戻ってきていた。表の家にいれば、性懲りもなく、ナルトを暗殺しに里人がやってくるからだ。
それを回避するために、いつもより早めに連れ戻したのだ。
それには、零番隊メンバーも関わってたりする。

『どうかした?』
「す、すまんが、お主の部屋なんじゃが、今日は地下じゃのうて、二階の方にしてくれんかのう?」
一応疑問系ではあるが、決定事項だと態度で物語っている。
『なんで?』
火影の言葉に、ナルトは首を傾げた。
その姿は、あいつらがいれば鼻血を吹き出して倒れてしまうほど、愛らしい。

「ふー。いろいろと問題があってのう……。」
言葉を濁す火影に、ナルトは怪訝そうな眼を向けるも、何も言わずに部屋を出た。
「とりあえずは大丈夫かのう………。」
念のために零番隊メンバーにナルトが帰ってきたことを知らせておく。


文を飛ばした火影の顔には、笑顔があったとか………。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ