NARUTO短編集1

□彼らの忍具・妖刀 ☆
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『目標、25メートル地点。右に1名、左に1名。その他2名。正面に20です。』



「紅狐、行けるか?」
『誰に聞いてるんです?』

紅狐は仮面を付けたままニヤリと笑った。

「………では、作戦通りに。」

蒼影は、紅狐の言葉に満足したのか、周りにいる仲間に声を掛けた。

「………………散っ!」

蒼影の合図で、全員が四方に散った。
紅狐は、迷わず刀を取り出した。妖刀と呼ばれる刀だ。それには、九尾のチャクラが組み込まれていて、紅狐、つまりナルトにしか扱えない得物である。

名前を紅姫。
呼び方は、“こうき”やそのまま“くれないひめ”と呼ばれる。

紅狐はそれをかまえると、迷わず正面から突っ込んだ。相手は、紅狐の気配に気付いてはいない。

『20ですか。早めに終わらせますか。』

紅狐は、ボソリと呟くと、刀を一振りした。それにより、首が二つほど飛んだ。

「っ!?何者だ!!」
敵は、突然仲間の首が飛んだことに驚き、声を上げた。

『忍相手に、尋ねることではないでしょう。』
紅狐はバカにしたように返しながら、敵の中に突っ込んでいった。

その姿は、まるで舞うようだった。

『あと、10です。』

紅狐がそう呟いた。敵さんは、訝しげに紅狐を見るが、当の本人は攻撃を止め、木にもたれ掛かったまま動かない。
動きが止まってしまった敵の中に、赤と青の二筋の光が両脇から入った。
同時に、両脇にいた者は、その光のえさになっていた。

一つの光が奪うのは、2人。
紅狐はそれを見ながら小さく笑った。


赤と青の光は、翠月と翠火の持つ長刀。
青赤剣(せきしゃくけん)と呼ばれる妖刀である。青妖と赤妖。二つで一つのこの世でたった一つの剣。これも、ナルトが作ったものである。
青を翠火、赤を翠月。


「「残り、6人。」」

二人の呟きに、また1人がこんどは紫の光を纏い現れた。
紅狐の後ろから飛び出し、正確に2人の心臓を突き刺した。


紫の光の正体は、紫央が持つ短剣だ。これもナルトが作った妖剣の一つ。名を紫妖という。


「残り、4人。」
「くっ、死ね────っ!!」
紫央の呟きに、敵の1人が紅狐に向かっていった。

「死ぬのはお前だ。」
「任務完了だ。」
紅狐の前に1人、紅狐から少し離れた前に1人。
それぞれ、長剣を持っている。


紅狐の目の前にいるのは、慧。長剣と短剣の両刀使いだ。
それぞれ、長剣を狼閣、短剣を狼灯と呼ばれ、これも二つで一つの剣だ。狼妖、狼剣と呼ばれ、慧に合わせてナルトが作ったものである。


最後に、蒼影。妖刀、黒妖。これは特別で、闇を纏わせた刀。
影を使う奈良家の嫡子だからこそ、使いこなせる刀だ。
ナルトがこっそり奈良家の影を九尾のチャクラに混ぜ合わせて作ったもので二度は作れない。


これらの剣は、使い手を選ぶ。しかし、ナルト自らが作り、それぞれに合わせて作ったのだ。使い手云々は関係ないのかもしれない。


『では帰りますか。』

紅狐は、24体の人だったモノを炎で燃やし尽くすと、全員の顔を見回した。

「そうだな。」
「にしても、総隊長自らが作ったこの刀、すごいな……。」
「ああ、それぞれに合っていて、使いやすい。」

紅狐は彼らの話を聞いて、小さく微笑んだ。


《喜んでもらえて良かったな。》


九尾はクックックと笑いながら言ったが、紅狐はそれに嬉しそうに頷いた。

『(ああ、作ったかいがあった。)』

紅狐は自分の手を見つめた。

妖刀を作るのに要した時間は、1年という長い月日。
特に、九尾のチャクラを使って鍛え上げ、彼ら1人1人に合わせて作ったのだ。
紅狐は、手を握ると、彼らを促した。



もうすぐ夜が明ける。翠月も、暁に戻らなければならない。
彼以外も、昼には下忍任務があるのだ。しかも、合同任務。3班だけでなく、ネジの班まで一緒だという。
6つの影は、お互い頷きあうと、その場に気配すら残さず消えた。






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