テニス短編

□君の為に出来る事
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翌日、案の定遅刻したリョーマはバスの中でも爆睡していた。

菊丸がちょっかいを駆けようが、桃城がわめこうが、目を覚ます様子は全くない。



「本当に、記憶をなくしても越前は越前なんだね……」

「ああ」

「……記憶喪失だって言われなきゃ、絶対気づかないね」

「………ああ」











「久しぶりだね、ボウヤ」

「誰?あんた」

「……真田の言った通り、本当に記憶がないんだね」

「真田さん……って、あの立海の副部長さん?」

「そうだよ。僕は立海の部長、幸村精市。よろしくね」

「ども……」


幸村に続いて、立海レギュラーが次々に名乗ってくるが、リョーマはなんだこいつら?という表情で首をかしげていた。

ついでに氷帝も同じような反応だったということだけここに記しておこう。











「で、一つ確認なんだが……本当にあいつは記憶喪失なのか!?」


氷帝の宍戸の声がコートに響いた。

宍戸の言いたいこともわかる。

テニスのプレイスタイル、スピード、強さ……どれをとっても以前の越前リョーマと遜色ない。

記憶喪失の人間が、以前と同じテニスをしてくるなんて……可能なのか?


「姫さんの場合、身体が覚えてるんやろ」

「小さいころからやってきたプレイスタイルだ。記憶を失くそうが、身体が勝手に反応しちまうんだろうな」


少しでも思い出してもらおうと、跡部も忍足も真田も手塚も。

いろいろ対策を練ってはみたが、全く手ごたえはなかった。

唯一手ごたえがあったのは名前をしっかり認識してもらえたことだろう。

未だに立海と氷帝は跡部と忍足、真田と幸村以外は名前を覚えてもらっていないようだ。




〈真田の場合〉


「どうだい?真田。ボウヤの様子は」

「全く成果は見えん」

「そう。とりあえず、跡部と忍足と手塚には負けないようにね」

「……何の話だ」

「好きなんだろう?ボウヤが」

「なっ!///」

「真田とボウヤがくっつけば、ボウヤと会える確率は増えるからね。応援してるよ」

「……ああ」




〈跡部の場合〉


「ったく、相変わらずだな、あいつは」

「ウス」

「樺地。とりあえず夕食に茶わん蒸しは必ずつけるように指示しとけ」

「ウス」

「忍足の野郎……次越前にセクハラしやがったら池に落としてやる………」




〈忍足の場合〉


「岳っ君、なにしてんねん」

「ユーシがこれ以上越前にセクハラしないように見張ってんだよ!!」

「別にちょっと足触っただけやん」

「立派にセクハラだ!!越前だって嫌がってただろうが!!」

「そないな事言うたって、姫さんの足、メッチャ綺麗やねん」

「だー!!いい加減にしねーと、跡部に池に落とされるぞ!?」

「跡部も姫さんに惚れてるみたいやからな。……これは負けられんな」

「いや。すでに負けてるって……セクハラしてる時点でお前の負けだろ……」




〈手塚の場合〉


「越前、汗はちゃんとふけ。そのままにしておくと風邪ひくぞ」

「あ、どうも……」

「越前、ドリンク、のむ?」

「不二先輩……どもっす」

「不二……」

「やっぱり優勢は手塚かな?忍足はあり得ないし、真田と跡部も……学校が違うからアピールしにくいもんね」

「何の話だ」

「クス……ボソッ…もちろん越前の隣に立つ人の話だよ……」

「おいっ」

「手塚、越前のこと好きなんでしょ?越前だけ特別扱いしてるし」

「そ、そんなことは……」

「ないって言い切れる?」

「………」

「ホント、手塚って正直だよにゃ〜」

「まぁ、安心しろ。俺たちは全員お前の味方だ」

「そうっすよ!うちの越前をあんな奴らには渡せねぇーっスから!」

「ふしゅー!!」



「……?何の話っすか?」


「越前の記憶が戻ったらすぐに分かる話だよ」

「へぇー……」




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