テニス短編

□Hospital Lover 後編
3ページ/5ページ








「リョーカ?」

「国光……別れてほしい」

「え?」




余り突っ込まれたくなくて、ストレートに告げれば、理解できなかったのか唖然とした顔で国光が固まっていた。



「アメリカに行くことになったの。日本じゃ、手術はできないんだって」

「……日本には戻ってくるのだろう?ならそれまで待ってる」

「っ、私はっ……。……手術は成功率も低くて……もし成功しても日本に戻ってこれるかもわからない。それに……」




私はずっと国光を騙してた……




「リョーカ………「私はっ、国光に想ってもらえる資格なんてないっ」……」




国光の言葉を聞きたくなくて遮った。

待ってるって言ってくれたこと、すごく嬉しかった。

でも、戻ってこれるかも……生きれるかもわからない。

それなのに、それまで待っていろなんて言えない。




「私は……私は……」

「リョーカ」



私は越前リョーマなのだと告げようとした。

しかし、それより早く国光が私を抱きしめた。



「国……光……?」

「知っていたんだ」

「え?」

「お前の正体が誰であろうと、俺はお前が好きだ」

「っ」



絶句。

彼は何と言った?



「な、んで……」

「まぁ、仕草とか表情とか……。2か月もかかったけどな」

「どうして……」

「言っただろう?俺はお前が誰であろうと好きだと」




頭はパニックを起こしていて、考えられない。

国光が優しく背中を撫でてくれた。




「リョーカ、俺はずっと待ってる。だから……何年かかってもいい。必ず戻って来い」

「っ……うん……うんっ……」




涙が止まらなかった。

ふと、国光に手を取られて何かを握らされたのが分かった。

恐る恐る目の前にもってきて広げると、ネックレス用チェーンに通された、"To R.E"と掘られた指輪があった。




「これ……」

「約束だ。約束の証に……持っていてくれるか?」




そう言って国光は自分の首にかかった指輪を見えた。

そちらには"To K.T"と掘られている。




「っ、国光!」




嬉しくてうれしくて……けど苦しくて……

まだ私たちは中学生で、これから高校に行って大学に行って……出会いは無限にあるはずなのに……



「えっ隊……絶対手術成功させて国光のもとにDもおるから!」

「ああ、ずっと待ってる」








―――また一緒にテニスをしよう、……越前……








次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ