テニス短編
□Hospital Lover 前編
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「何の用だ、跡部」
「お前に恋人ができたって不二から聞いたんだが……まさかリョーカだったとはな」
「………」
「安心しろ。リョーカは俺様にとって妹みたいなやつだ」
跡部が嘘をついているようには見えなかった。
「手塚、アイツの身体のことは聞いたのか?」
「少しだけなら……」
「……まぁ、今まで無茶通り越してハチャメチャしまくってたからな。……あいつは今のままだと長く生きられない」
「………」
それも聞いた。
付き合うようになった時、リョーカの口から直接、これ以上無茶したら長くは生きていられない。それでもいいのか、と……
「それにアイツはお前に隠し事をしている」
「隠し事?」
「俺様の口からは言えねぇーよ。自分で気づくか、リョーカから教えてもらえ」
「……ああ」
「……」
「……」
話が続かない。
お互い、部活はすでに引退し、部長も2年に引き継いだ。
「なあ、手塚」
「なんだ」
「本気なのか?」
「意味が分からん」
「本気でアイツのこと、好きなのかよ」
「当たり前だろう」
何を言い出すのかと思えば……
好きでもない人間に告白すほど、自分は器用じゃない。
「何がってもアイツを捨てないって約束できるか?」
「ああ」
当たり前だと力強く頷けば、跡部の肩から力が抜けたのが分かった。
「なら、何も言わねぇーよ。んじゃ、俺様は帰る」
「リョーカに会って行かないのか?」
「まぁ、今日は様子見に来ただけだからな。……リョーカをよろしく頼んだぜ」
跡部はそれだけ言うと、振り返らずに手を振って帰っていった。
リョーカに詳しく聞けば、幼なじみだという。
小さいころから兄みたいな存在で、よく身体のことで気にかけてくれているそうだ。
跡部の言っていたリョーカの隠し事が何か分からないが、たとえそれがどんなものでもリョーカを信じようと思う。
たとえ、衝撃的な真実を知ったとしても………
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