『Lost and Rescue〜囚われた心〜』 完結

□第1部 脅かされる心2
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   * *




「さて、私がテニス部の顧問、竜崎スミレだ。1年だろうがビシバシ行くから覚悟しな!」


「「「「ハ、ハイっ!!!」」」」


「よし……ん?リョーマ……リョーマじゃないか!!」






――バッ






「……誰?」

「人の話聞いてなかったのかい……。竜崎スミレだよ、リョーマ」

「………あぁ、ん、久しぶり、バァちゃん」



「え?リョーマ君、知り合い??」

「日本にいた時のね。それから親父のコーチだった人」



リョーマの瞳に一瞬陰りが入ったことに誰も気づかなかった。



「で、なんであんたがここにいるんだい?」



だってあんたは――――




――ピラッ




「はい、許可書。これで文句ないよね?」



竜崎の言葉を遮るように見せられた一枚の紙には、大きく許可書と書かれ、下にはテニス界の了承の印が押されていた。

スミレはそれに目を通すと、それを差し出した少年――リョーマの顔を見る。



「本当にいいんだね?」

「でなきゃ、ここにはいない」

「……そうかい」



仕方がないね。


そうつぶやいて再び声を張る。



「次のレギュラー戦にはリョーマも参加させる。いいね!」



ダメだと言わせない雰囲気に不満げな顔の2.3年は黙り込んだ。

3年レギュラー組もなんでこいつが……という表情をしている。

そんな中、1年だけが盛り上がっていた。

……あぁ、桃と……何気に海堂もだ。



「すごいね!リョーマ君!!」

「1年は本来なら9月にならないと参加できないんだぜ!!」

「ふーん」



あんまり重大性に気づいてないのか、興味なさそうなリョーマ。

ただ、テニスができるなら何でもいいって感じだ。




――ガバッ



「やったな、越前!勝ち上がってきたらレギュラーになれるぜ!」

「試合できる?」

「おう!……ってか、お前、もう少し鍛えろよ。ちょっと柔すぎるぜ?」



プニプニとリョーマのお腹をふれる桃城。

リョーマはピクッと肩を震わせると桃城の腕から抜け出した。



「桃先輩、セクハラで訴えますよ」

「おいおい……女子じゃねぇーんだし」

「……何を言っとる。リョーマはれっきとした女の子じゃぞ?」

「………」






























チコチコチコ……チーン






























「「「「ええええ―――――っ!!!」」」」































東京の外にまで響きわたるような声が上がった。



「なんだい、気づいてなかったのかい?」

「……竜崎先生、女子が男子テニス部に入るのはどうかと……」

「安心しろ。さっきリョーマが見せたろ。テニス界許可が下りてるんだ。私らがそれに文句はつけられんよ………」



あとはリョーマがどうするか選ぶだけだ。



次々と事実だけを述べる竜崎に周りは戸惑いの表情を浮かべるしかなかった。




「え?でもリョーマ君、学ラン着てたよね?」

「別に……どっちでもいいじゃん」




一応校長の許可はもらってるし。



やっぱり興味なさそうなリョーマに戸惑っていた1年だが、別にいっかと受け入れた。

単純な奴ばかりだからか。

リョーマはリョーマだと受け入れることができたのだ。




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