テニス短編
□It's woman's day.
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「んじゃ、行くぜ!越前!!」
「……いいっスよ」
「?」
いつもと違い、元気なさそうなリョーマに、桃城は首を傾げた。
強い炎を宿す瞳も、ずいぶん沈んでいるように見える。
しかし、誰も何も言わないし、リョーマ自身も何も言わないから大丈夫だろうと安易に考え、そのままボールを打った。
いつも通り返ってくるボールだが、威力は全然感じられない。
「どうしたんだ?負けたら乾汁だぜ?」
「分かってるッスよ……」
痛みを耐えるような表情をしながらも、負けじと言い返すリョーマ。
しかし、結局桃城に6−2で負けた。
「珍しいな、越前が桃に負けるなんて……」
いつもなら簡単に勝ってしまうリョーマなのに……。
不二や河村もリョーマの異変に気付いたのか、頻りに首をかしげている。
真っ青な顔をしながら、荒い息を吐き出すリョーマは乾に結果報告するために近づいた。
乾の元には試合が終わったであろう手塚がいる。
「どうした?威力が全然なかったが……」
相変わらずノートを開きながら乾が尋ねた。
しかし、それに対して答える気力がないのか、リョーマは黙ったままだ。
俯いていて、誰にもリョーマの表情をうかがうことはできない。
ここで確認だが、テニス部レギュラーはリョーマが女の子だということを知っている。
また、氷帝や立海などの全国大会常連校も知っている。
テニス協会から通達が行っているのだ。
いわく、性別は女性だが、男子テニス部に参加させる、と。
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