『届かない真実』 完結

□21.関係
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「工藤家の話をしようか」


理解出来ない者たちのために、幸村はそう提案した。

リョーマの顔が、一瞬でしかめられる。


「リョーマ、そんな顔しないの」

「あそこ、嫌いだし」

「……そういうわけにもいかねぇーだろ?」


ムスッとするリョーマをなだめる二人。






「工藤家は、世界でもトップの家柄だと言うぐらいは知ってるだろ?アーン?」

「まぁ、日本中のあちこちにその家……もとい会社があるからね」

「そうだ。あそこには、一人娘がいたことは知ってるか?」

「……たしか、家を飛び出して困ってるという噂はあったはずだ」


ニュースにもなっていて、未だに噂も流れているのだから……知らない人間はほとんどいないだろう。


「その娘に子どもがいることは?」

「知ってるにゃ!今でも探してるって有名だし」

「子どもの年齢は?」

「今なら、たしか中1じゃなかったか?」


跡部と幸村の質問に、素直に答える青学。

気付いているのだろうか。二人によって真実を引き出されていることに……。


「じゃあ、そいつの父親は?」

「アメリカでも日本でも有名なテニスプレイヤーだと言っていたはずだ」

「たしか……‶サムライ"だっけ?」

「サムライ南次郎だ。じゃあ、その南次郎さんの名字は?」

「越前だろ?青学でもその名は残ってる」

「まだ気づかねぇーのか?なら、その子どもの趣味はなんだ?」

「テニスに決まって…………」



バカでもようやく気付いたようだ。

跡部と幸村は、大きなため息をついた。


まぁ、途中で気付いた奴も何人かいたようだが……。


「え?越前って……オチビの……え?どういうこと?」


…………前言撤回。


まだ理解していなかったようだ。



「景吾、精市、長過ぎ。ハァー、南次郎は俺の親父で、母さんは、工藤家の一人娘だった。
 本当は親父が後を継ぐはずだったけど、嫌がったから逃げてた。そんで、逃げる為にアメリカに渡ってた。


 他に聞きたいことは?」


……とうとうリョーマがキレた。


ノンブレスで言い切ったリョーマは、キッと先輩たちを睨んだ。


「関係を黙っていたのは、言えばすぐに広まってそいつらが来るから。
 それだけならまだしも、他のライバル会社や金目当てのバカな奴も集まってきて、危険だから工藤の名は出さないようにしてたんスよ!!
 だって、言えば、乾先輩は調べてしまうし、景吾と精市の共通の幼馴染みは、俺しかいないし」


全員がリョーマから放たれる言葉に固まった。

もし、それが本当なら、自分達はとんでもない奴らを敵に回したことになる。


「ハァ、だから言いたくなかったんスよ……。親父はキレて、工藤に乗り込んでいったし、母さんは泣いちゃうし、景吾と精市は暴走するし。



 ……んでもって、もう青学に通えないし。また逃げなきゃいけないし」


つらつら並べられる言葉の羅列に、誰一人顔を上げられなかった。


……ある一つの声が聞こえるまでは。









「……どういう状況だ?チビ助」

「……何でいんの?リョーガ」





…………嵐の上陸、再び!?



22.破滅
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