『届かない真実』 完結
□14.記憶
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それから2ヶ月がたったが、毎日話しかけてきたおかげか、少しずつリョーマの瞳に色が戻ってきた。
名を呼べばこちらを向いてくれるし、食事や睡眠もしてくれる。
本当に少しずつだが、リョーマは回復の兆しを見せていた。
これには一同も安心した。
まだ、口は利けないが、文字で会話出来る。
そして、テニスも出来る。
まだ怯えは残っているものの、人に触れるようになってるし、もう少し頑張れば、前のように笑ってくれるかもしれない。
特に、跡部と幸村はそれを支えに、毎日リョーマの元を訪れていた。
「リョーマ!テニスしよう!!」
「今度は勝ってやるからな!!」
そう言ってやれば、ぎこちないながらも、笑みを浮かべてくれる。
「あ……おや……じ………母……さ……」
「リョ、リョーマ……お前……」
「リョーマ、リョーマ!私たちが分かる!?」
「リョ……ガ、……ケー……ゴ……、セー……チ!」
「リョーマ!!」
「今、名前……」
「……前も同じような反応だったよな……」
必死に腕を伸ばし南次郎と母・倫子に抱きつくリョーマ。
その瞳には、涙が浮かんでいた。
滅多に泣かないリョーマが泣いている。
でも、きっと嬉し涙だから………
「ケーゴ!セーチ!テニスしよう!」
「親父〜!相手して?」
「リョーガ!テニスしない?」
「母さん!テニスしてくる!!」
少しずつ言葉を話せるようになったリョーマ。
ずいぶん時間がかかった。
それでも、リョーマは戻ってきた。
「二度とあんなリョーマは見たくないね」
「ああ。……不満だが、手を組まねぇーか?……何より、アイツの………リョーマのために」
「いいね。ついでに、親にも言っとこうか。リョーマの為なら、親の力だって使うからって………」
「ハンッ、まだ言ってなかったのか?」
「ムッ、景吾は言ったわけ?」
「ああ。快く了承してくれたぜ?」
「……リョーマ、可愛いもんね」
テニスラケットを片手に走り回る姿に、二人は肩の力を抜いた。
「「何が何でも、その笑顔を守ってみせる!!」」
そう二人は誓った。
このまま、何も起こらなければいい。
そう思っていた。………が、そうもいかず………
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