『届かない真実』 完結

□14.記憶
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それから毎日のようにリョーマを構うために訪れた二人。



そしてある時・・・


「リョーマじゃねぇーな。誰だ?」

「俺?俺はリョーガ。お前らがチビ助の友達か?」

「リョーガ?……ああ、南次郎さんが拾ってきた子供か」

「リョーマを傷つけたら許さないからね」


そういって、二人は中に入っていく。


「ヒュ〜、言うねぇ〜。お前らこそ、チビ助泣かしたらただじゃおかねぇーよ」


リョーガの言葉は、二人には届かなかった。





「リョーマ、来たぜ」

「リョーマ、おはよう」

二人がテニスコートを訪れると、小さなリョーマと南次郎がテニスをしていた。


無口なリョーマは、あれからより一層しゃべらなくなった。

それでも、テニスをしているときだけ、口元が弧を描く。


「よう、早いな」

「「おはようございます。南次郎さん」」

挨拶する二人に、南次郎は笑うとリョーマを置いて中に入っていった。



「リョーマ」


「ケーゴ!セーチ!」

「「え?」」


足に衝撃がくるまで、何が起こったのか分からなかった。


「リョーマ……今……」
「名前……」

「ケーゴ!セーチ!」


舌ったらずなしゃべり方だが、はっきりと言った。


ケーゴ、セーチ……と。


「「リョーマ!!」」


感激のあまり、リョーマに抱き着く二人。

きゃはきゃはと笑い声をあげるリョーマに、二人は泣きそうになった。


どれだけ嬉しかったか………。


ようやく努力が実を結んだのだ。





それからリョーマは両親と同じくらい……へたすりゃ、それ以上に……跡部と幸村に懐いた。


誘拐事件は絶えることはなかったが、その時は確かにリョーマは笑っていた。



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