『届かない真実』 完結

□10.苦痛
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もうどれくらい経ったかわからない。


身体は蹴られてない場所はないんじゃないかと思うぐらい、あちこちを蹴られた。

踏みつけられた腕は、しびれて思うように動かない。

よくこんな状況で吐かずにいられたなと、自分でも思うほど、悲惨な状態だった。


こめかみの傷は、何度も踏まれ、広がっていた。

血は固まり、黒く酸化している。



水で流したら痛いだろうなぁ〜



今だに蹴られながら、そんなことを思っていた。


痛い。でも、蹴られすぎて痛みがマヒしてるみたいだった。


もう、何も感じない………。








「ちっ、今日はこれで終わりにする。月曜日、覚悟しておくんだな」


手塚の言葉に、全員が一発ずつ蹴ってから部室に戻っていく。

リョーマの荷物は部室には置いていないから、被害を受けることはない。










誰にいなくなったコートで、リョーマは転がっていた。


何も感じなくなったとはいえ、痛みがあるわけで………起き上がれない。



「(痛くないのに、起き上がれないのって変な感じ)」


リョーマは自嘲気味な笑みを漏らし、静かに空を見ていた。

一人、また一人と、部員が出てくるのが分かる。


さすがに制服だからか、コートに入ってくることはなかった。


まるで、何もなかったかのように帰る部員。

自分たちがしてることに、異常を感じず、楽しそうに笑っているレギュラー。


青学は狂っていた。テニス部だけでなく、学校全体が。



「(でも、俺のこと知ったら、手のひらを返したように接するんだろうなぁ〜)」


くすくす―――


リョーマは、その光景を思い浮かべ、笑った。

今まで何十回とみてきたものだ。

どうせ、先輩たちも同じだろう。


リョーマの心は限界だったのかもしれない。

今まで壊れずにいたこと自体が不思議なのだ。


「人は人を裏切る。……そのために傍にる……」


楽しそうに笑うリョーマ。

もう、学校にはリョーマ以外誰もいなかった。



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