『届かない真実』 完結

□10.苦痛
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リョーマは、テニスコートまで来ると首を傾げた。

誰もいない。……けれど人の気配はする。



またか……。



それで済ませてしまうほどに、リョーマは疲れていた。


今日もリョーマに暴力を振って部活を終わるのだろう。

リョーマは小さく息を吐き出すと、ゆっくりと足を進めた。



………逃げるわけにはいかない。(本当は今すぐにでも逃げ出したいけど)



リョーマは固くこぶしを握ると、コートの真ん中あたりまで来た。








―――ガッ


石やテニスボールが急な速度で飛んできた。

石はこめかみに、ボールは体にあたる。



ツゥ―――



こめかみが切れたのか、血がほほを伝った。

しかし、それには構わず、ボールを当てられる。



「ぐっ」



ボールが腹にあたり、うめき声をあげると、その場に蹲った。


丸まる背中に、いくつものボールがとめどなく降ってきた。


痛い………。でも、それ以上に悲しい。


もう、先輩たちは何の目的でやっているのか分かっていないだろう。

ただ、制裁のためと言い聞かせて自分たちのストレス発散や八つ当たりをしているようにしか見えなかった。


そんなことを考えてると、突然ボールの嵐がやんだ。

ザッザッと足音が聞こえる。


あぁ……また蹴られるのだ……また殴られるのだ……と思うと、あきらめにも似た感情が湧き上がってくる。


リョーマはそっと顔を上げた。



「……なんだその眼は!!まだ反省してないのか!!」

そういわれて殴られた。





………でもね、先輩。俺は情報を売った覚えはないんだ……。何を反省すればいいの?

……跡部さんや幸村さんに会うのが、そんなにいけないことなの?
ほかの人たちだって、他校の人と会ってることもあるのに……





―――ガッ ドカッ バキッ

暴力は止まらない。リョーマは息も絶え絶えになりながら、今にも離れそうな意識を保っていた。



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