『届かない真実』 完結

□10.苦痛
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「やだ、やだ、やだっ!!……景吾!精市!!」


リョーマは頭に浮かんだ名を叫んだ。

しかし、その二人がここにいるはずもなく……



「ちっ、おとなしくしてろ!!」



―――ドカッ



男はリョーマのお腹を力一杯殴りつけた。



「ひっ」



服の中に入ってくる手に、吐き気を感じた。

どうしたらいいのか分からない。逃げたいのに、男たちに抑えられて、逃げられない。



息が止まりそうだった。



「ひっ……あっ……、ひっく……ふっぅ……」


息ができない。



リョーマは、必死に息をしようとするが、しようとすればするほど、焦って息ができない。


完全に過呼吸になったリョーマに、周りの男は慌てた。

もし、これでリョーマが息をできず死んでしまえば自分たちの所為になる。


「ちっ!」


男たちは、リョーマを蹴りつけ、その場から逃げた。







残されたリョーマは、手で口元を押え、過呼吸を止めようと必死だ。

「うっ、ゲホ……カハッ」

息が戻ると同時に、血を吐き出した。


苦しくて苦しくて……でも誰も助けてくれなくて……


リョーマは泣きたかった。涙は出てこないけど、心は血を流しながら泣いていた。

いつまでもこの場にいられない。


リョーマは、激痛が走る身体を起こすと、ふらふらと立ち上がった。

眩暈がするが、フェンスにもたれかかっていれば歩けないこともない。



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