『届かない真実』 完結
□9.違和感
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* *
「よぅ、青少年。……何かあったのか?」
「何が?」
南次郎は、出かける前のリョーマに声をかけた。
「いや……なーんか、いつものお前と違和感あんだよなぁ〜。何もねぇーならいいけどよぅ」
「何もない」
「そうか……。何かあったら言えよ?自分の中にため込むのは、お前の悪い癖だからな。
俺たちが無理なら、あの金魚のフンにでも相談しろよ」
「金魚のフンって………。もしかして、景吾と精市のこと?」
「おーよ」
「……まぁ、何かあったらね」
リョーマはそういって家を出た。
それを、南次郎はいつもの飄々とした空気を消して、心配そうに見送るしかできなかった。
* *
「なんで、お前がここにいるんだよ!」
―――ガッ
「死ねよ!裏切り者!」
―――バキッ
「消えろよ!!」
―――ドカッ
教室に入るなり、振りかざされる腕と脚に、リョーマは諦めたようにカバンを下して目を閉じた。
声を出さないように、痛みを顔に出さないように、……ただ終わるのを待つ。
HRまで、あと3分。それまで我慢すれば、とりあえず一度は終わるのだ。
テニス部の先輩に言われているのか、クラスメイトも、首より上を傷つけることはしない。
お腹や腕、足などを蹴ったり踏ん付けたりしてくる。
痣はどんどん大きくなり、変色していった。
二の腕は、肌色がほとんど見えないほど、痣で埋め尽くされていた。
少しでも動かせば、痛みがリョーマを襲う。
それでも、リョーマは学校に通い、部活にも出ていた。
一度でも休めば、二度と行くことはできないと知っているから………
10.苦痛