『届かない真実』 完結
□7.最終日
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リョーマはめったに弱音を言わない、泣かない。
すべて、自分一人で抱え込んでしまうのだ。
倒れてしまったとしても、リョーマは何も言わないだろう。
きっと何もなかったように振る舞うのだ。
跡部と幸村は、そんなリョーマを知っている。
「「………」」
「ほら、水分取っておけ」
「汗、拭かないと風邪ひくよ……」
「あ……」
リョーマが顔を上げると、ファンタを差し出す跡部とタオルを差し出す幸村がいた。
「………ありがとう」
リョーマは少し照れながら受け取ると、タオルで汗を拭き、ファンタのプルタブを開けた。
冷たいファンタがのどを通る。
「二人はテニスしないの?」
「「リョーマのほうが大切だ」」
「………さっきから、ファーストネームで呼んでることが多い気がする」
「「気にするな/気にしないで」」
納得してないが、それ以上リョーマは突っ込まなかった。
どうせ、何を言ったって、よっぽどじゃない限り、聞かないのだ。
………言うだけ疲れる。
「………で、先輩たちと試合、しないんスか?」
鳳や宍戸など、数名は青学と試合をしているが、ほとんどがリョーマの近くにいた。
「うーん……別にいいんじゃね?お前とやったし」
「そうそう。それに、何か青学、イラついてるみたいだし」
「越前取られて、怒ってんじゃない?ふぁぁ〜」
「ジロー、起きてたんか」
「リョーマと寝る〜」
「ヤダ」
他愛もない話で盛り上がる彼らに、青学の目が鋭くなっていく。
あと数時間でこの合宿も終わる。
それまでの我慢だ。そう言い聞かせて、怒りを抑え込む彼らに、やはりリョーマたちは気づかない。
………否、リョーマは気づいてるのかもしれない。
悪意に敏感になってしまった心が、震えていたのだから………
8.悲鳴