テニス短編

□メリークリスマス
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―――12月24日




「おい、桃!それは向こうだ!」

「す、すみません!!」

「乾先輩、これは……」

「それはあっちだ。詳しくは手塚に聞け」

「不二〜!絡まったー!」

「もう、何してるの、英二。ほら、早くしないと時間がきちゃうよ」

「わぁ〜〜!!」

「英二!暴れるな!」





「おい!ケーキは!?」

「冷蔵庫に入ってる!!」

「クラッカーは全員分ちゃんとあるか!?」

「3度確認したから大丈夫だよ!」

「お皿と箸類は!?」

「セットOKだにゃ〜!!」

「大石!そっちをもう少しあげてくれ!」

「あ、ああ!分かった!」





――コンコン


「失礼しまーす」

「先輩たち、準備できましたか?」

「ああ」

「じゃあ、1年はそれぞれ持ってきた料理を並べておいて」

「不、不二!プレゼントの箱がいがんじゃったよーー!」

「あーもう、何してるの英二。ほら貸して」

「すごーい!」






「そ、そろそろ時間だ!みんな、用意はいいか!?」

「大丈夫です!」

「なんとか間に合ったな……」

「先輩!目標が見えました!あと5Mです!」

「よし、全員準備!」





――コンコン


「しつれーしまー……」



――パンパンパーン


「「「Happy Birthday♪越前!!」」」


――っ!?」


「……な、何事っスか?」





机の上に並べられたたくさんの和食とチキン。

隅っこにはきらびやかなツリーに、天井に飾られている華やかな飾りとそして……



〔Happy Birthday♪越前!!&Merry Christmas♪〕



と書かれた看板。





「ほら、こっち来て!」



唖然として固まった状態の我らが可愛い(生意気な)後輩(同級生)を菊丸が引っ張って真ん中に連れていく。



「ここ……本当に部室っスか?」



レギュラー用の部室に呼ばれたはずだった。

しかしそこは異世界にしか感じられない。

視線を巡らせて、自分たちレギュラーの名前の入ったロッカーを見つけてやっぱりここは部室で間違いないのだと確信する。

ちょっと安心した。


そして、そのまま部室内を一周してある一点で視線が止まった。



「今日は越前の誕生日だからな!お前のスキな茶わん蒸しもあるぜ!」



視線が止まったある一点には白い湯気を立てる茶わん蒸し。

そればかりを見つめる後輩に、これ以上何を言っても耳には入らないだろうと判断して、じゃあ、食べようかと声をかける。


部員全員が入ってもまだまだ余裕のあるレギュラー用部室。

真っ先に茶わん蒸しに手を伸ばす本日の主役や、クリスマス用に用意されたチキンに噛みつく平部員。

同じものを掴んでケンカしだす2年レギュラーにそんな彼らを仲裁しながらも笑って食べている3年レギュラー。





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