『Lost and Rescue〜囚われた心〜』 完結
□第1部 脅かされる心9
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全国大会の決勝戦。
立海VS青学の試合も大詰めを迎えていた。
残すところもあと一試合。
第5回戦、幸村VSリョーマ。
リョーマは立海からのきつい視線を受けながらコートに降り立った。
味方からの声援は1年と青学トリオ、……そして氷帝だけだ。
大事な試合だというのに、青学の2.3年――特に3年レギュラーからの応援はない。
桃城たちはそれを苦々しく思いながら、リョーマに声をかける。
「君、女の子なんだってね」
「…………」
「……手加減はしないよ。二度とテニスできなくされたくなかったら棄権してくれるかな?」
「…………ボソッ」
「え?」
「王者立海の……しかもその部長の言葉とは思えないっスね」
――それって、私が棄権しないと勝てないって言ってるのと同じっスよ?
挑発するような言葉に、幸村の顔が歪んだ。
「棄権はしないっスよ。……それから、手加減もいらないっス」
リョーマはそうはっきりと言い切ると、もう話すことはないとサーブの位置についた。
五感を奪うテニス。
それが幸村のテニスだと手塚に聞いた。
ボールが見えない、聞こえない状況になってどう戦うか。
のほほんとしたままのリョーマの代わりにトリオと1年たちが考えてくれたが、結局それにかからないようにする、という答えしか出なかった。
いつかけられるか分からない。
けれど、リョーマにはそれが恐怖だとは感じられなかった。
「テニスってさ……楽しむもんじゃないの?」
テニスを相手を傷つける道具にしてほしくない。
けれど、今の立海に言っても聞く耳は持たないだろう。
リョーマは一瞬考えるそぶりを見せたが、小さくため息をつくと試合に集中した。
どうせすでに視界は奪われてるんだ。
今更考えたところで仕方ないだろう。
「このまま……つぶれちゃいなよ」
幸村はリョーマめがけて力一杯打ち返した。
慌てる周りだが、試合中に割り込むわけにもいかない。
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