テニス短編
□元旦
1ページ/4ページ
1月1日
リョーマは、除夜の鐘の音を聞きながら、お参りに来る人たちのために甘酒を用意していた。
本来なら、母・倫子の仕事だが、仕事の関係で、家で書類を作っているから、(強制的に)リョーマの仕事となった。
「リョーマ、初詣は誰かと行くのか?」
「なんで?」
「仮にもお前も女だろ??」
「残念。彼氏いないから行かない」
リョーマはからかってくる南次郎を相手にしながら、訪れる人に笑顔を振りまいていた。
リョーマの姿は巫女姿。
正直、テニス部の先輩たちには見られたくない。
まぁ、先輩たちの家からここまでは結構な距離があるから、わざわざ来ることはないだろうが……。
「さみしいやつだねぇ〜」
「うるさい。それより、何回鳴らしたか……わかってる?」
「78回」
「………80回だよ。ちゃんと数えろよ」
リョーマはわざとらしい溜息をつくと、再び訪れてきた人を相手した。
108回鳴らすはずが、それ以上ならされてはたまらない。
「おー、リョーマ」
「何」
「そっけないねぇ〜。着物着ろよ?」
「ヤダ」
「問答無用。巫女衣装に比べたら、ましだろ?」
「……今すぐ脱いでいい?すぐにでも寝たいんだけど」
リョーマは南次郎をにらんだ。
これが当分続くと思うと、今すぐにでも投げ出してしまいたい。
・