Another

□existence
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太陽がとっくの昔に沈んで、月が我が物顔で空を支配していた。

昼間には空や辺りが明るすぎて見えていない星々も今や宝石のようにキラキラと輝く。
その輝きは、女性たちが喉から手が出るほどに欲しがるジュエリーの何倍、何十倍も綺麗だ。

何よりも空にこんなにもあるというのに、誰も欲しがらない。
むしろ誰も手に入れる事ができない。完璧な守備こそが自らを光らせている


星は遠くから見れば輝くものだが、近くに行けば、所詮ただの球体である。
色がついていようが、水も空気も無ければ小さかったり大きかったり様々である

本当の物を見れば今まで思い描いていたものが否定されてしまう。



だから人間は望んでオゾン層の外に出ず、この丸い惑星から夢を空に描いているのだ。




時刻は深夜、と呼ぶにぴったりの時間だった。
空に星が散らばり、虫が静かに心地よい音を奏でている


あまりにも多すぎるほどの人間が夢の世界を漂っている中、
ある1人の青年はぷつんと、糸が切れたように夢から覚めた。


喉が渇いたわけでもなければ怖い夢を見たわけでもない。

こういう職業柄、寝れるときに寝なければ目まぐるしく密度の高いスケジュールをこなすことができない。
それゆえなんの理由も無く途中で起きることなど無いに等しかった


しかもそれが厄介なことに、1度起きたらなかなか寝られなくなると言うおまけまでついてくるのだ。

実にいらない特典である。



目をつぶっても僅かな明かりが目に入って消えてくれない。
そうして、ふと思い出す


(電気消さなかったっけ.....?)


目を開けてしまったらもうしばらくは眠れない。
ケンはとうとう体を起こしてしまった


今日はヒョギとレオが1室、埃アレルギーな為にラビが1室
そうしてケンとホンビンとエンが1室、そういう部屋割りだった


と言っても、エンは今夜も遅くまで仕事が入っていたので寝るときには2人だった。

だからきちんと電気を消してベッドに入ったはずだ。
そもそもきちっとしたホンビンが忘れるはずなどなかった


と、なれば......
ケンは帰ってきているかもわからない姿を探す

普段エンは遅くに帰ってきても電気をつけずに静かに音も立てずに入ると静かに眠りにつくのだ


エンはジーンズにパーカーを着てニット帽をかぶったまま
――――今朝仕事に出かけたときと同じ格好のままベッドで眠っていた。

夕方まで一緒に仕事をしていたのでよく覚えている


まだまだ浅そうな眠りに不安を覚えた。

一体この人は、何時に帰ってきてるんだろう
雰囲気から、つい先程な気がしてならなかった


鞄を床にほったらかしにしてる感じ、今日は相当疲れていたのだろう

帽子すら脱がないなんて


と、顔を覗いて驚いた。
それはもう本当に突然に。


苦しそうに顔を歪めたかと思えば、しきりに汗が吹き出し苦しそうに声を漏らしている

布団を握って何かに怯えたように体を小さく丸めてしまう


「エニヒョン、起きてください。エニヒョン!」


何か悪い夢でも見ているのだろうか。

それならば起こさなければエンはいつまで経っても辛いままだ、と
ケンは必死にエンを揺さぶった。


急にエンの目がこぼれ落ちそうなくらい見開かれたかと思うと、気を失ったかのようにぐったりと倒れ込んだ

しばらくすればまた、スースーと規則正しい呼吸が聞こえてきて安堵した


帽子を脱がせるとベッドにきちんと寝かして、布団をかけてやる

本当は着替えもしたほうがいいんだけど......
寝てるのを脱がせるなんてそんな高度なことできやしない


さっきよりも楽そうに寝息を立てているリーダーの頭を撫でて考える


(いつも魘されてるのだろうか......)


そうすれば、ケンはもう眠れなくなった。
また魘されたときに自分が起こして楽にしてあげたいと
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