novel

□サヨナラが言えなくて
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「大丈夫だよ、また会えるから」

彼はそう言って、まるで白いシャツに赤い花が咲いたように
真っ赤に染まった腹を抑えたまま苦しそうに、だけどどこか笑顔でそう言った。

赤い花からは未だにドロドロした液体が流れ落ちて、彼をその池に溺れさせる。
だから俺は必死に彼がいってしまわないように手を握って声をかけたけど

彼は最後にパクパクと口を動かして音にならない声を発して、一瞬笑って目を閉じた。
その体からはもう何の音もしなくなってしまった。
毎日奏でていた規則正しい音も無ければ、声など当たりまえにない。
胸が上下することも無い、もちろん笑いかけることもない

最後に動かした口がなんて言ったのかもわからない俺は
どんどん体温がなくなり冷たく固くなる彼を必死に抱きしめて
まるで子供みたいに泣き喚くことしかできなかった。
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