novel
□キスの合図
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可愛い生き物、とはどういったものを表すのだろうか。
可愛い生き物とは。
例えば犬とか猫とか小動物
名前を呼べばワンだのニャーだの鳴いて近づいてくる
頭をなでれば嬉しそうにしっぽを揺らす。
ふわふわの毛を持って、気持ちよさそうに体を丸めて眠る。
両手で抱きしめることもできれば、鼻先とキスすることもできる。
結局は自分が可愛いと思えば可愛い生き物にな
るのだ。
本名はチャ・ハギョン。6月30日生まれのA型の蟹座。
身長は180cm(本当かはわからないけど)体重は......以下略
名前を呼べばどうしたのー？って近づいてくる。
頭をなでれば嬉しそうに笑みをこぼす。
ふわふわすぎる髪の毛は、時にヘアスタイリストを困らせる。
疲れた時にうたた寝するとき、机の上で体を丸めて眠る。
細身の体を両手で抱きしめることもできれば、鼻先にキスも落とせる。
自分が思えば可愛い生き物ならば、そう。彼は可愛い生き物だ。
年上に生き物、なんて言い方は失礼かもしれないけれど
気分が思いっきり顔や態度に出るし、かと思えば大事なことは隠すのが上手い。
高いところやお化けなんて物理的な物を初め非科学的なものも怖くて、
小さく縮まったりする姿は本当に可愛い。
あれで25歳だというのだから本当に驚いてしまう。
本題に移るとしよう。
相手と自分だけが知っている、秘密の合図があるとしよう。
例えば、「tip a person the wink」という言葉があるようにウインクは秘密の合図の大定番となる。
他にも髪に触れるとか髪を耳にかけるとか、髪に関連したものも多いだろう。
「エニヒョン」
ケンは自分が読んでいた本を閉じると、床に座って雑誌を読んでいたエンを呼んだ。
俯き加減だった体が直され、いつでもキラキラ輝いてるヒョンの目がケンに向けられる
またいつものようにどうしたの？って開こうとして開きかけたエンの口は
ケンの“秘密の合図”によって閉まることになった。
エンは少し戸惑ったような顔をしてから周りをキョロキョロと見渡した。
1つの家に6人で住んでいる為、どこに誰がいてもおかしくはない
近くに誰もいないことを確認したエンは雑誌はそのまま、ケンの隣に腰掛けた
そしてゆっくりと瞳を閉じる。
この時が最も緊張と愛しさを感じる瞬間である
優しく触れるだけのキスをあげれば
エンは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてケンから視線をズラす。
ケンとエンの合図は耳、だ。
右耳に触れるのはケンからのキスの合図。
左耳に触れるのはエンからのキスの合図。
ネットでみた合図を、キスの前にいつもやっているとエンも覚えてしまったようで
何も言わなくても目を合わせて耳に触れるだけで近づいてくるようになった。
気づいたときには世界で1番可愛い生き物になっていた
前々から可愛かったものの、合図を覚えた瞬間、小動物など比べ物にならないほどの可愛さになった。
「ヒョン、顔上げてください」
だから今度は、左の耳に触れることにする
すぐに理解したようにさっき以上に顔を真っ赤にして俯いてしまった。
まぁそんな姿も可愛いからいつまでも待っててもいいんだけど
今日は早くしないと誰かが来るかもしれないから
きっとエンもわかっていただろう。
少し涙ぐんで顔をあげるとケンの服をつかみながら
思いっきり目を閉じながら一生懸命に首を伸ばして唇を重ねてくる
柔らかいそれがケンを包み込む感触に胸がキュンキュンと締め付けられる。
もう可愛いとかいう言葉じゃ収まらないくらいの可愛さ。
可愛いの最上級ってなんだろう。天使？女神か？
ケンはそう思いながらエンの肩を掴むと少し見つめてから
もう1度自分からキスをしかけた
今度は触れるだけではなく、角度をずらしてしっかりとフィットさせる。
驚くほど柔らかな唇の感触が鮮明に伝わってきて気持ちよさに頭がおかしくなりそうだ
無理矢理に口を開かすと逃げるように後退してるエンの舌と自分の舌を絡める
舌の少しザラザラした感触と、柔らかい唇が一緒にきてその違いに夢中になって
エンが苦しそうに肩を叩くのにすら気づくのが遅くなる
それでも離すつもりはないので、少しゆっくり味わうことにして
途中途中で酸素を吸う間を与えてあげる
そうすると慣れてきたエンはケンの舌に自ら同じものを絡めててくるようになる。
ケンだけが知っている、エンの秘密なのだ
受け取れきれなかった唾液が顎を伝いながら2人は唇を離した。
軽いキスならよくしているけど深いキスはあまりにも久しぶりだったので
部屋は2人の荒い息遣いで埋められる
「ヒョン、好きです」
2人で見つめ合って、へへへって笑い合って
ああ今日も幸せだなぁって思う。
そんななんでもない、ある素敵な日。
誰にも秘密の合図の出番。