novel

□Cinderella
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朝早くから並んで待っていてくれて本番ではどこのファンにも負けない声で応援してくれる
そんなファンと当分会えなくなってしまう


今までの感謝とこれから会えなくなってしまう寂しさを込めて最後の最後のまで名残惜しく手を振って
楽屋に戻って化粧を落としてウィッグを外して衣装に着替えるとき


まるで12時の鐘がなったシンデレラのように、俺にかかった魔法は消えていく


「灰かぶり....か........」


小さくつぶやいて鏡の中にいる自分と目を合わす


(なんて醜い顔をしているんだ....)


容姿がどうのの話ではない。自分自身はまだ体力も有り余ってるというのに。


十分とは程遠いけれど、寝れる分だけはちゃんと寝てるし、ご飯も一応はちゃんと食べてる。
ストレスだって、踊れば消えていくし、そもそもストレスも多くない。


やりたいことやって、毎日幸せだ。
強いていえば、自由がほとんどないくらいだろう。
だけどそれはこの道を好いた時から覚悟していた。


どうしても取れない疲れの原因はこれかもしれないけど。


ステージ用の派手な化粧を落とすと次はシンプルなラインを入れてもらう。
ここで、仕事が終わればどれだけ気が楽だろう


「エニヒョン、今日はどのくらいですか?」


「今日はいつもより遅いかも。先に寝てて」


ドラマの撮影のためにこれから現場に向かうことになる。
朝から晩まで仕事。明日の朝も早い。


少しだけ、ほんの少しだけ嫌気がさしていた


沢山の仕事を、しかも俺に合った仕事を選んできてくれて
どんなことにだって挑戦させてくれた事務所には感謝してるし、もっと頑張って恩返ししたいとも思っている

だけど、なんでみんなが寝てるのに俺だけ働かないと、なんて思ったりもして


(性格悪いな......ほんと...)


席を立つ瞬間にそんな考えを捨てて気を引き締めた
気が緩むとすぐにミスするんだから......。


スタッフさんとメンバーに挨拶して楽屋を後にした。


パタン、と楽屋のドアがやけに静かに閉まったのが耳に残ったりもして
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