夏空

□第10章
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珠理奈ちゃんは俺をにらむ。


「だったら引きずってでもいけばいいでしょ?大丈夫って言ってるじゃないですか」

「そうか…」



だったら仕方ない。



「よっと」

「きゃっ!ちょ、ちょっと!」


嫌がる珠理奈ちゃんを抱き上げた。

いわゆるお姫様抱っこ的な状態。



「おっ、下ろして!」

「おとなしくしないと落ちるよ?」



そういうと珠理奈ちゃんは黙る。

赤い顔が更に赤くなった気がするけど気にしない。



「私…重いし」

「全然だよ。気にするな」


そういうと観念したようだった。


「振り落とされないようにしがみついて」

そういうと俺の首の後ろに両手をまわしてきた。

うん、ますますお姫様抱っこ。













そのまま篠田先生の部屋に運ぶ。

もう帰ってるかな?

ちょっと頑張ってドアをノックする。



“はーい”

「宮澤です。今、いいですか?」

“おー、いいよ。どうぞ”




…開けて欲しかったんだけどな…。

更に頑張ってドアを開く。

篠田先生は普通に俺が入ってくると思っていたらしいけど…



「…宮澤くん?どうしたの?」



珠理奈ちゃんを抱えているのを見ると、表情を変えて立ち上がる。



「さっき病室の前で会ったんですが熱があるように見えて」



珠理奈ちゃんをゆっくりと下ろして、篠田先生の指示した椅子に座らせた。

フラフラしながら椅子に腰を下ろす。

さっきよりもしんどそうに見える。



「…珠理奈ちゃん、先生にしっかり見てもらってね。じゃあ俺はこれで」

「ありがとう、宮澤くん。じゃあまた次回ゆっくり」



篠田先生は診察の道具を持ち出していた。

早く出なくちゃ。

するとか細い声が聞こえた。



「…ありがとう、ございます」

「いや…帰りは迎えに来てもらってね」



まだお父さんがいればいいけどな。

そんなことを思いながら珠理奈ちゃんに返事をする。




「失礼します」



玲奈はあの様子だと暫く眠り続けるだろう。


「明日には少しは元気になっていればいいな」


玲奈と珠理奈ちゃんの2人にそう思いながら家路へとついた。
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