夏空

□第6章
2ページ/17ページ




ブブブブブ…。



机の上の携帯が震えて2人ともビクッとする。




「あ…ご、ごめんね?自宅から電話みたい…」

「お、おう、じゃあ早く出なきゃ…」

「うん…もしもし?珠理奈?どうしたの?」



あのチビスケめ…。

俺と玲奈の様子をどこからか見てるんじゃないだろうな!?

あちこち高まった俺のこの情熱、どうしてくれよう!





玲奈は通話を終わらせると申し訳なさそう。



「ごめんね…あの、珠理奈から買い物頼まれたの…」

「…全く、俺たちより若いんだから楽をするなと説教してやらねば!」

「ふふっ、そうだよね。でも今日はちょっと遠くにダンスの練習で出かけてるから帰りが遅くなるみたい」

「そうかー。じゃあ仕方ないか…ええっと…」



さすがに「じゃあもう一回仕切り直し!」とは言いづらい。

うむ…今日は俺の運がなかったということで諦めよう…シクシク。




「…勉強、続けようか?」

「だなあ」



でも何となく意識しながらの勉強はあまり身が入らなかった…。







そして帰りの時間。

いつものように送っていく。



「あ、今日は珠理奈ちゃんに頼まれた買い物があるんだよね?」

「うん…じゃあコンビニに少し寄っていい?」



買い物が終わって、また松井家へと歩みを進める。



「あの…佐江ちゃん、今日はごめんね?」

「…あ、うん…いや、あはは」



多分さっきのことだよな。

でも玲奈が謝るのはおかしい。



「玲奈が悪いわけじゃないよ…って、珠理奈ちゃんのせいにしたいわけでもないけど」

「そ、それは…珠理奈に申し訳ないよね…」



ちょっと玲奈は苦笑い。



「あのね、明日なんだけど…私の家で勉強しないかな…?」

「え…でもご家族は…」

「あ、あのっ…明日は、誰もいないの…」

「ほ、本当?」

「うん…だから、気を使わなくていいから…」



そ、それは…もしかしたら玲奈からのお誘いなのか!?

思わず黙ってあれこれ考えていると、



「あ、そ、その…だ、誰もいないから誘うっていやらしい子だって思わないでね…?」

「お、思ってないよっ!」



すみません。多分いやらしいのは俺だけです。



「お母さんと珠理奈は明日、珠理奈のダンスレッスンのことで遠くに行くから…お父さんは仕事だし」

「そうなのか…」



あのちんまいガキんちょがいない。

それだけで何だか俺に自由がプレゼントされた気がする。



「ビバ・フリーダム!」

「え?」

「何でもないです」




明日か…楽しみだなあ…。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ