夏空

□第5章
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むにゃ…。

電車の中は適温で涼しくて、枕もあって…。





枕?

パッと目を開ける。

あ、あれ?枕?…目の前には細い肩。



こ、これは…。

恐る恐る顔を上げると…




「あ、お、おはよう…佐江ちゃん」

「…!玲奈!ごごご、ごめん!俺、すっかり寝ちゃって…!」





なんてことだ!

すっかり玲奈の肩を枕にして眠ってしまっていた!


ああ、もう謝り倒すしか…と思っていると玲奈が慌てて首を振る。




「う、ううん!いいの!あの…嬉しかったし…」

「え?嬉しかったの?」

「だって…佐江ちゃんが私の肩でぐーって…ふふふ…寝顔を見れたし…」

「う。よだれ垂らしてなかった…?」

「もう、大丈夫だよ?寝顔が可愛くて、私に甘えてくれてるのかなーって思うと嬉しいし…」




玲奈はすごく嬉しそうだった。

俺に気を使ってくれてるわけでもないんだろうけど…。




「で、でもせっかくの2人の時間なのに…ごめんな?昨夜、楽しみすぎてあまり寝てなくて…」

「…ほんと?すごく嬉しい…あのね、私もそうだったの。でもお弁当作ろうと思ったから頑張って寝たの」




頑張って寝たら余計寝れない気もするが…だけど、玲奈的には本当に努力して寝たんだろう。

それに…玲奈の膝の上のバッグ。

弁当を作るのだってすぐには出来ないと思う。

結構早起きして作ってくれたんだろうな。




「ありがとうな、玲奈」

「え?何でお礼?」

「だって早起きしてお弁当作ってくれたんだよね?俺は真似出来ないからさ…ありがとう」

「そんなこと…私だって楽しみだったからお礼を言われることじゃないんだよ?」



玲奈はにっこり微笑んでくれる。

すごくその笑顔が可愛くてドキッとする。




「ずっと憧れてた人と付き合えて…こうしてデートまで…すごく幸せ」

「俺、そんなに大した男じゃないよ…」

「ううん。ずっと好きだったんだもん。だから…本当にさや姉には感謝しているし…もちろん佐江ちゃんにも」

「そういや最初は山本に呼び出されたんだよな…」

「…もしかして…さや姉だったら良かったのに、って思った…?」

「え?うーん…実は最初は山本から告白されるのかな?って思ってたからなあ…」

「そうだよね…あれじゃ勘違いしちゃうもん…でも、もしさや姉が告白してたら…ど、どうしてた…?」




玲奈が何故か若干緊張しながら俺に質問する。




「うううーん…“もしも”って言われても全然想像出来ないなぁ…ただ…」



あの時に思った事。



「ただ、そうなったら…良い友達と思っている付き合いがもう出来ないのかなとか考えたような気がする」

「友達…そうだよね。2人はもうすっかり仲良くなっていたから」




そんな会話をしててふと思った。



あれ?ここどこだ?



「玲奈…俺たちってどこに向かってるんだっけ?」

「ええと…あのね」



玲奈がちょっと言いづらそうにしている。
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