夏空

□第3章
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バイト先では今日はホールは人が足りてるということなので、厨房と片付けの手伝い。

ぼんやりと仕事するわけにはいかない。

給料もらって仕事しているんだからちゃんとやらなきゃ…。





「わっ」

「うおっ…って、なんだ…渡辺さんか…」

「もぉー、みるきーって言ってって言うたやん」

「渡辺さんは年上ですので」

「ほんまいけずやなあ…」





皿を洗っていると後ろから両肩に手を置いて脅かしてきた人。

この人は高柳さんたちと同じく大学一年の渡辺美優紀さん。

大阪からこっちの大学へ進学して来たらしく関西弁。

近くに関西弁のうるさい奴がいるせいか、初対面の時から緊張はしなくて良かったけど。






「ところでですね」

「ん?どしたん?」

「ちょっと離れてもらっていいでしょうか…」




渡辺さんはとにかく人との間に壁がない。

というか…ちょ、ちょっと馴れ馴れしすぎる…かな?あはは…。




「なぁに?照れてるん?可愛いなぁー」

「…高校生をからかうのやめてくださいよ…全くもう」





そんな会話をしていると、厨房の方で料理があがったという声がして渡辺さんが「はーい」と返事をする。




「宮澤くん、今度お姉さんとデートしような?ふふー」




その姿を見送って首を振る。

俺って…女の子に翻弄される運命なのだろうか…。





「お悩みのようですな?」

「ひっ!…だ、誰かと思った…驚かすのやめて下さいよ…」

「こんばんは。神出鬼没が代名詞の古川です」

「誰からも言われてないでしょ…」





絶対にこの人はツッコミを待っている。

生まれながらのボケ体質に違いない…。






「年上のお姉さんに誘惑される男子高校生なんてここで萌えないでいつ萌えるのかと!」

「い、いきなり大声を出さないでくださいよ…」




古川さんは何故か言葉の後半、声を張り上げた。

しかもどこ見ているのか分からないし…ちょっと怖い。




「…いや、この際、年上のお兄さんと男子高校生でも…」




訂正します。すごく怖い。









やがて忙しい時間は一段落。

時間もちょうどいいし上がろうかな…と思っていると、厨房から声がした。



「あっ、宮澤くん!」



高柳さん?どうしたんだろう。

近寄っていくと、



「宮澤くんのお友達が来てるみたいなんだけど…」

「俺の?」




誰だ?

…松井さんじゃ…ないよな?

一体誰なんだろう?






時間だからそのまま上がっていいよ、とマスターに言われて着替えて荷物をまとめた。



テーブル席に待っている誰かのもとへと急ぐ。
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