世界が変わる

□第七章
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陽菜Side


あれから佐江ちゃんは黙って手を繋いで歩いてくれた。

なんか気まずくなりそうだから話そうと思っても話題が浮かばなかった。

でもたまにちらっと見るとニコッとしてくれて。

佐江ちゃんのこういう優しいところが大好き。

でもさっきはその笑顔も皆のものだったよね?




「独り占めしたいなんてわがまますぎる」




いっそのこと佐江ちゃんが陽菜を切ってくれていいのに。

そんなこと、出来る訳がない。

多分…佐江ちゃんも同じ事考えているんじゃない…?




佐江ちゃんに見送られて空港行きのバスを待つ。





「佐江ちゃん…あの…」

「優子に会ったらよろしくね?…にゃんにゃん」





ああ、もう佐江ちゃんは切り替えてしまった。

2人で歩いている時は陽菜だけのものだったのに。




「うん…ねえ、メールするね?今夜」

「ありがとう。待ってるよ」





ニコニコしている佐江ちゃん。

でも…陽菜がいなくなったらきっと悲しそうな顔になるのかな。



向こうからバスがやってきた。



「にゃんにゃん〜、迷子になるなよ?」

「むうっ。そんなに陽菜、頭悪くないもん!」

「あははっ!ごめんごめん」



そんな風に冗談を言って和ませてくれる佐江ちゃん…いい人だよね。

大好きだよ?

佐江ちゃんにバイバイと手を振る。

黙って笑顔で手を振ってくれる。




バスが走り出す。

佐江ちゃんに手を振るとずっと手を振ってくれている。

そして陽菜の姿が多分見えなくなったけど、それでもずっと見送ってくれている。

バスが角を曲がるまでそれは続いた。








何故だろうね。




佐江ちゃんの姿が見えなくなると陽菜は泣いてしまったの。



何故涙が出るのかすら分からないんだから、やっぱり陽菜はすっごく頭が悪いのかもしれない。





…今別れたのにもう会いたくなるよ、佐江ちゃん。
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