世界が変わる
□第六章
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佐江 Side
陽菜と別れて舞台の稽古へと向かう。
今日も夜の本番のために今は集中、集中!
… … … … …
今日も気合充実!という感じで終わったー!
同じ舞台だと言っても同じ演技になるわけじゃない。
それは他の役者さんたちも同じだから、毎回が違う舞台になる。
こんな充実した気持ちになれるのは本当に嬉しくて嬉しくて…
「終わりたくないなあ…」
皆と話して、軽く食事とかしちゃってホテルへ帰る。
「あ、そうだ…忘れるところだった」
スマホを取り出してメールを作る。
即送信、っと。
もしかしたらまだ仕事かもしれないから、電話はやめたがいいかなと思ってメールにした。
〜♪
え?
ピッ。
「もしもし?」
“もしもし!今大丈夫なの?”
「うん、大丈夫〜。電話かかってきたからびっくりしたよ〜」
“だって…昨日はメールだけだったしー”
「全くー、ゆきりんは本当に佐江が好きすぎるよなあ〜」
“何それー!佐江ちゃんだって…私を好きなくせに…”
一瞬、黙ってしまった。
「えー、だから佐江は皆大好きだからなあー」
“そういうチャラい発言要らないから!!”
「あははー、ごめんごめん!」
ゆきりんからの電話。
本当はすごく嬉しいよ。
「ゆきりんは佐江が大好きってのは分かってるんだけどね!」
“人の事ばっかり言わないー!”
ゆきりんのこと、本当はすごくすごく大好きだよ。
「だってー、メールしたのに電話かけてくるとか、それ以外考えられない!」
“それは…さっき言ったみたいに昨日話せなかったから…”
佐江もね、本当は話したかったんだ。
「もうすぐホテルに着くから、またこちらからかけ直すよ。駄目?」
“仕方ないなあ…どのくらいかかるの?”
本当は切りたくない。
ずっと声を聞いていたい。
「もうすぐ着くけど、シャワー浴びたりしたいから電話する前にメールするね」
“うん、わかった!”
多分長く話せないけど、本当はずっと話していたいよ。
「それじゃまた後でね」
“うん…待ってる”
でもゆきりんにこんなこと、言えないんだよ。
昨夜の陽菜の乱れた姿、そんな彼女を激しく抱いている自分の姿が見えないのに蘇る。
ゆきりんと同じメンバーにそんなことをしている自分は最低で最悪で。
そんな自分は君に似合わない。