世界が変わる
□第五章
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佐江 Side
まさかにゃんにゃんが…いや、陽菜が来るとは思わなかった。
もしかして佐江が行くって言ったから…いや、それはないか。
だって陽菜は佐江とは浮気であって、本当に好きなのは優子なんだから。
優子へのあてつけじゃないかなって思うけど、陽菜の気持ちはよく分からない。
見た目とか喋り方とか本当に小悪魔。
好きなのかと言われればもちろん好き。
だから誘惑に負けてしまった。
でも簡単じゃなかったよ。だって…
佐江はゆきりんを失ってしまった。
もちろんそれは佐江の中でだけの問題。
ゆきりんは知らないから。
でも毎日のように連絡を取り合っていると言ってはいけないことを言いそうになる。
“佐江はゆきりんを大好きだよ”
って。
だけどそれを言っては駄目だと思っている。
好きな人がいるのに簡単に他の女の子の誘惑に負けてしまった。
それが何か理由があったとしても、こんな佐江はゆきりんには似合わない。
しかも抱いた相手は心友の恋人。
それを知らない振りをして危うい関係を続けている。
だからといって、ゆきりんに会いにくいって思いはない。
優子ともそう。陽菜ともそう。
罪悪感は感じているけど、どこか夢を見ているような感覚。
だからいきなり陽菜が来ても別に動じない。
優子から電話、と聞くと少しは気になるけど。
自分のせいで2人がどうにかなったらどうしようとか、ゆきりんにバレちゃったらどうしようとか、全く感じてない自分のいい加減さにもうんざりしている。
そしてこうやって普段交流のない子たちと一緒にいて、お芝居の話とかして…
それで癒されるのは確か。
玲奈の事だって皆が何故か気にするけど、同じ仕事を目指す者同志だよ?
お互いにそれ以上もそれ以下もないんだ。
ゆきりんのことも…そう思わないようにしている。
友達以上恋人未満。
こんな状態の佐江の恋人だなんてそんなこと出来ない。
言う事だって出来ない。
皆とにこやかに話しながらも心はからっぽだった。
あ…そういえば…ふと思い出した。