セツナレンサ

□第1章
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学校は終わり、バイトは夜から。
そんな週末に心友にお願いされた。



「お願い!次のオフに出てよ!」
『ええー…佐江はやっぱりああいうの苦手だからさぁ…』
「分かってるんだけど、佐江がいると盛り上がるんだよね。特にネコちゃんたちが」
『それは嬉しいよ?だけどなあ…絶対的に多いのがタチじゃん?逆恨みされるのはもうやだよ…』
「その辺は色々と考えるから!ね?」


才加がここまでお願いしてくることは珍しい。
本当は全く気が向かないんだけど…。
しょうがないなあ。



『わかった。でも一次会までね?』
「良かったー!恩に着る!」
才加の大きな力強い握手に包まれる。
『いてて…そういうなら佐江の好みの相手でも探してよ。お店に来るでしょ?色々な子』
「そうなんだけど、出会いを求めるのはやっぱりタチが多いからさ」
『そりゃそうか…ってさっきもそんなことを話したような…』



また話は振り出しに戻る。


才加はお店を経営している。
繁華街で夜の街。普通のバー。

…に見えるけど本当はちょっと違う。
普通に一般の人も来れるけどあくまでも「女性限定」のお店。
もっと分かりやすく言うとビアンバー。
女同士のカップルが集まったり、出会いを求めたりする場所。
佐江は普通に誰かと飲みたい時にはよく行く。
お店のママは心友だしね。

だけどどうしたって割合的にはタチの女性が多いと思う。


タチは攻め。
ネコは受け。
何となくだけど女性を好きな女性って言うのは男性ポジになりたい人が多いかもしれないなぁ…。

もちろん告白される事もある。
すごくいい子だったり綺麗な子だったりするけど、心が動く子はいない。
試しに付き合ってみて!って言われて付き合ってもやっぱり続かない。

佐江がそんな調子だから


「佐江ちゃんといると不安になる」
「佐江ちゃんの好きと私の好きは違うみたい」


とか…他にもあったけど大体こういう理由で離れていく。



『佐江は本気の恋愛が出来るのかなあ…』
「何でも最上を求めすぎるのが良くないんじゃないの?」
『でもさー…』


話を続けようとすると扉が開く音。


「いらっしゃいませー!」


才加の元気な声が響いた。
こういう店には不似合いかもしれないけどその元気な声に惹かれて皆来るんだろうな。



『才加、チェックするよ。そろそろバイトに行かないと』
「今日はご馳走するよ。集まりに来てくれるって約束のお礼」
『それはありがと』



才加に手を軽く振って外に出る。
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