夏空

□第17章
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「宮澤くん」
「はい…あ、店長」
「ちょっといい?」





店長に呼ばれて話をするのは二度目だ。
そして予想通りの話。





「二号店出すんですね!おめでとうございます!」



すると店長はニコニコしながら



「いやいや、準備に時間がかかったけどいい物件が見つかってね」




ということは…

妥当な線だと高柳さんが二号店の店長かな?
厨房の戦力がいなくなるのは痛いけど渡辺さんや古川さんたちもかなりこなせるようになってる。
何なら俺も結構出来るので問題はないな。





「それでね、二号店の店長を宮澤くんに頼んでもいい?」
「…え?…えーっと…あの、前に」
「うん、前にも打診して断られてるけどね。それでも君は人望もあるし仕事も出来るから諦められなくて」
「てっきり高柳さんだとばかり…」
「高柳さんにも聞いてみたら宮澤くんが一番合ってるんじゃないかと彼女も言ってたんだよ」
「そうだったんですか…」
「ずっと仕事をしていこうと思ってるんだったら悪い話ではないと思うんだけどどうかな?」






確かにいい話ではある。
ずっとバイトをしていた俺を店長に抜擢してくれようとしてくれるなんてありがたい話だ。


だけど…。




「あの、実はご相談したい事がありまして」
「え?な、なに?まさか辞めるとか…」
「い、いえいえ、出来れば働いていたいんですけど…」







暫く店長と話をした。






「なるほどね…でもそれはまだ不確かなんだね?」
「自分の気持ちでは100%ではありますけど…」
「分かった。じゃあそれがちゃんと固まったらまた教えてくれる?」
「はい、すみません」
「僕はすごく残念だけど…高柳さんにもちゃんとそれは伝えてまた相談しなきゃだねぇ」





いつも穏やかで、そのヒゲがなければもっと若く見える店長。
だけどちゃんと色々一緒に考えてくれる。
ずっと適当に過ごしてきた自分を変えないと。








部屋から出ると渡辺さんがやってきた。




「なあなあ、宮澤くんっ。二号店の店長の話受けたん?」
「耳が早いですね…」
「どうなん、どうなん。やっぱり受けたんやろ?うちもそっちに異動願い出そうかな〜」
「えーっと…結論を言うと辞退しました」
「えー!なんで?なんで?めっちゃええ話やのに」
「…あっ、ほらお客さんですよっ!いらっしゃいませ!」
「あん、もう…」





ちょうどいいタイミングでお客さんが来てくれて良かった。

そして店長が今度は高柳さんを呼んでる。
もしかしたら高柳さんにも迷惑をかけるかもしれない…。




だけどもう後悔はしない。
自分だけで決めるんだ。
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