夏空

□第16章
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「宮澤くん」
「はい?」
「最近前にも増してバイトに精を出してるね」
「そうですね、頑張らないといけないなと思って…前から頑張ってるつもりですけど」
「うん、宮澤くんは頑張り屋さんだよね。最近はそれに更に拍車がかかってるなって」




高柳さんがニコニコしてる。

厨房からホールにいる俺に話しかけている今はちょうどランチが終わったとこ。
今から交替でまかないでも食べる?という状況。




「ねえ、一緒に食べない?」
「いいですよ。今日のメニューは何ですか?」
「オムライス。好き?」
「大好きです」
「良かった!トッピングに何を乗せちゃおうかな〜」





高柳さんがご機嫌で卵を取り出した。
その光景を見て思わず微笑む。





「おやおや、いいですなあ、お2人さん」
「おわっ、びっくりした…」
「ぬふふ。結構お似合いですぞ?ちゅりと宮澤くん」
「あの、俺には…」
「はいはい、分かってますよ」




いきなり現れた古川さんが俺の前に手のひらを見せ付ける。






「皆まで言うなっ!宮澤くんはモテモテですから。ちゅりもそれは分かってるんですよ」
「…はあ」
「彼女はいるし、君を好きな女性はたくさんいるみたいだし」
「いえいえ…」
「だからね、分かってるんですよ。古川もちゅりも。でもこうして店内では仲良くしてくれる。それは嬉しい事です」





古川さんは何を言いたいんだろう。






「ところで宮澤くん!将来は考えてますか?」
「へ?将来?…ある意味、もう将来って年でも」
「なーにを言ってますか!それなら年上の古川たちはどうなりますか!喧嘩売ってるなら買い叩きますよっ!」
「す、すみません…将来か」
「ずっとここで働いて、行く行くは店長とか?もしくはスキルを生かして独立?」
「考えないといけないですよね。本当に」





古川さんは目をパチパチ。






「ありゃ。意外」
「な、何がですか?」
「良くも悪くも宮澤くんは刹那的な人だと思っていたので」
「せつな…何ですか?」
「正直言うと、暫くは宮澤くんはバイトしてても無気力と言うか、未来を考えずに生きてる危うさがありました」
「そ、そうですか?」
「それが今は違いますね。何かありましたか?」
「…そりゃもう色々」
「ですよね!それが宮澤くんに色々考えさせて成長させようとしてるのかもしれませんね!」






暫くすると高柳さんがオムライスを2つ乗せてトレイに乗せてきた。






「2階で休憩しよ?あ、もしかしてあいりんも?」
「古川は次のタイミングで休憩するのでお2人でどうぞ!ささ、宮澤くん」





古川さんに背中を押されて階段の方へ向かう。




2つ並んだオムライスには片方だけから揚げが乗っていた。
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