夏空

□第14章
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彩が去り、珠理奈ちゃんも帰ってしまった。

俺は1人でぼんやりしている。
なんなんだよ…。

いや、珠理奈ちゃんが言っていた自業自得は俺かもしれない。

どちらも追いかけない俺は本当にヘタレで…。




携帯を取り出す。
電話をかけてみよう。
まずは…やはり彩に。
電話をするけど出ない。
気付かないのか、無視しているのか。

珠理奈ちゃんは…。
いや…やめよう。
あんな会話をした後だからこそ1人になりたくて帰ったのかもしれない。






部屋に戻る。
大きな溜め息をつく。



「俺、本当にヘタレだ…」


何年経っても流されてばかりで自分で決められない。
人に言われたらそっちの方へ歩き、ダメだと言われたら立ち止まる。


…玲奈の時だってそうだよ。
玲奈のご両親に何を言われても、俺は会いに行き続けるべきだったんじゃないか?

もちろん何も言われないように進路も決めて、大学へ行って…
それならきっと問題なんかなかった。

ただただ、俺の甘さだ。

玲奈に会いたいから学校へ行かない。
玲奈がいないから受験もやめた。
挙句の果てにはひきこもって心配した彩に甘えて…。
今は今で目覚めた玲奈に求められるまま、病院へ行ってる。
そして彩はそれを嫌だと思って悩んで…。



部屋の中で頭をかきむしった。


暫くすると外で雷の音が聞こえる。
雨か…?
夏の天気は変わりやすい。
さっきまではそこそこ天気が良かったと思ったけどな…。

すぐに雨音が聞こえる。
ザーザーという音に雷の音も時々聞こえる。

この後はバイトなのについてない…。
でも暫く時間があるから少しは収まるかな…。
やがて出かける時間になると少しはましになったようだった。














傘をさして走って店に入る。
するとすぐにまた激しい雨になった。



「あーあ、今日はあまりお客さん来ないかもしれへんね」


渡辺さんが溜め息をついた。


「そうですね…」


返事をしながら俺はぼんやりと今日の彩と珠理奈ちゃんの事を考えていた。



家に帰ったら連絡をしよう。
どちら、ではなくて2人に。




結局それからお客さんは少なくなって早めに上がる事になった。
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