夏空

□第11章
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彩との話は最近いつも平行線だ。

そしてまた…彩は出て行くのかな…。



「今日、泊まってええかな?」

「え?ああ、うん…」



ちょっとびっくりした。

最近はいつも話した後で彩は出て行くから。

でも今日は久々に会ったからなのかな。



「シャワー、借りるね…」



そういうと着替えとバスタオルを持って浴室へ。

シャワーの音が聞こえてくる。




部屋を見渡す。

彩のものがここ2年くらいでずいぶん増えた。

歯ブラシとかマグカップ、着替えなんかも。

最初の頃は泊まるのも恥ずかしがってたけど、俺は一生懸命誘ってたんだよな。

彩…俺を愛してくれて、俺も愛している大事な恋人。







目を閉じる。

そうするとすごく昔のことが綺麗に思い出せるようだ。














あの頃、俺も彩のお陰で段々立ち直ってきて…

そして彩の気持ちを知って、俺たちは付き合い始めたんだよな。

2人で一緒に遠出しようぜって言って。

バスに乗っていこうか、電車にする?なんて。

ガイドブックとか、ネットで検索とかしながらどこがいいか2人で選んでた。







やっと決めた場所へ向かう途中。

土曜日はやっぱり混んでるなあなんて思っていると、



「おー!宮澤だよな?!久しぶり!」



誰かに声をかけられた。

ええと…えーっと…多分、中学校?だよな?高校にはいなかった。



「お、おー…ひ、久しぶり!」

「いや、お前、俺のこと忘れてるだろ?」

「ぐ。何故わかった…」

「お前、分かりやすいんだよなあ…ほら、中学で一緒だった…」



名前を言ったらすぐ分かった。

だけど思い出そうとしてもまた忘れてしまっている…ごめん、思い出せない誰か。

するとそいつの横に女の子がいて「友達?」ってそいつに聞いてる。



「ああ、そうそう!へへへ、俺の彼女なんだ。これからちょっと出かけるところでさ」




その女の子が名乗って挨拶をしてきた。

彩も「誰?」って顔をしている。

そうだ、俺も紹介しなきゃ…。




途端に緊張感。

俺と彩が付き合い始めたのを話したのは才加とともちんだけだ。

他の奴らに「こいつ、俺の彼女」なんて紹介したことは一度もない。



ああ、なんだろう…

こんなに緊張するものだったのか!



「なあなあ…お前ももしかして彼女連れ?」



そいつがニヤニヤしながら聞いてくる。

彩はちょっと居心地悪そうに俺を見ている。



ええい、心を決めろ!
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