夏空

□第10章
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暫く玲奈が落ち着くまで一緒にいた。


やがて…



「玲奈?」

「う、ん…」



玲奈は泣き疲れたのか、段々目が閉じてきたみたいだ。

俺の手を握る力も弱まって、寝息が聞こえてきた。


「玲奈…俺、帰るね?」



すーっ…という寝息が返事のように聞こえてちょっと笑ってしまう。

玲奈…ずっと傍にいてやりたい。

だけどそれは同情なのか、昔の恋愛感情なのか。

俺、本当にどっちつかずだ。


するっと玲奈の手から力が抜ける。

元々そんなに力が入らない玲奈の手を解くのは難しくない。

そのまま玲奈の前髪を撫でて「またね」と玲奈に囁いた。










病室の外に出てドアを開くと…



「あ…」



珠理奈ちゃんが壁に寄りかかっていた。

いつからいたのか分からない。

入ろうとして中の様子を窺ったら俺がいたから遠慮したのかもしれない。



「…宮澤さん、お見舞い来てくれてたんですね」

「うん…入れなかったならごめん」



何て言っていいか分からずそう言うと首を振った。



「いいえ…姉さん、すごく嬉しそうでした…」



ど、どこから見ていたんだ…?

不安そうに見ると珠理奈ちゃんの顔が赤く見える。



ま、まさか!?

あのキスも見られたのか!?


そう思ったけど様子がおかしい。

顔が赤いけどちょっとフラフラしているように見える。





「珠理奈ちゃん…具合悪い?」

「…ちょっとだけです」

「いや、ちょっとじゃないだろ」

「大丈夫です。姉に…」

「玲奈は眠ったからさ」

「…でも」



ぐっと珠理奈ちゃんの腕を掴む。

脅かさないように優しく。

そしておでこに手をあてた。

うん、すごく熱い。



するとちょっと驚いたようだったけど、



「は、離して下さい…一応来た事を伝えないと」

「そんなよろよろした様子を見せるのか?」


珠理奈ちゃんは唇を噛み締めた。



「先生の所に行こう。絶対に熱があるだろ」

「大丈夫です。ほっといてください」

「ほっとけるわけないだろ」



その声にちょっとびっくりした顔を見せる。



「…本当に、行きませんから」

「無理にでも引っ張っていくぞ?」
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