夏空

□第9章
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シフト表を見てため息をつく。

正直、かなり働く時間は減っている。

でもこれも仕方ないんだけどな…。



それで苦肉の策で店長に相談した。



「いつも迷惑をかけてしまってすみません…」

「いやいや、宮澤くんには長年頑張ってもらっているからさ。確かにディナータイムにいないのは痛いけど…」



店長はそういうと本当に痛そうな顔をした。

俺も痛い。

厳密に言うと懐が。

昔、仕送りだけはもらっていたから厳密に言うと貯金を切り崩せばどうにかはなる。

だけどいざという時のためにそれは残しておきたい。

「いざ」がいつかは分からないんだけど。




「でもまあ、開店から16時前まではいてくれるからランチタイムは大助かりなんだけどね」

「本当にすみません。でもなるべく1日置きくらいには入れるように頑張ります」


















3年ぶりに目覚めた玲奈。

彼女に会いに行くために俺は毎日通っている。

それは“放課後になってから行く”という設定だからだ。

今は夏休みの予定だからもっと早めに行く事にしてる。





制服を着ていくと言うのはちょっと抵抗がある…と篠田先生に相談した。

だけど答えはあっさり。


「大丈夫だよ。一度家に帰ってから来たんだって言えばいいし」

「そんな簡単なもんですか?だって珠理奈ちゃんは…」





そう、珠理奈ちゃんはもう高校3年生のはずだ。

だけど玲奈に会う時は”中学校が終わってからそのまま来る”という設定なんだ。

だから病院に着いたら中学時代の制服に着替えてる。

最初の日と彩と一緒に行った翌日以来会う事はなかった。

だけど、ある日仕事が休みのタイミングで違う時間帯に行った時に出くわした。





「…あれ?珠理奈ちゃん?」

「あっ…お、おはようございます…」



珠理奈ちゃんは明らかにサイズが少し小さそうな中学時代の制服を着ていた。

気まずそうに俺から目線をそらす。

なんで?と思っていると、



「…私、間に合わない時はそのまま病院に来る事もあるんです」


何を言うのかと思って話を聞く。



「だから、常に中学時代の制服は持っています。姉が気付いてしまう事がないように」

「なるほど…そういうことか」



思わず納得してしまった。

すると珠理奈ちゃんは恥ずかしそうに見えたけど、キッと俺を見返して、


「別に宮澤さんに高校時代の制服を着てとは言いません。私がそうしたいだけですから」



そう言うとスタスタ歩いて行ってしまった。







その話を篠田先生にする。

先生は苦笑いしながら、


「あー、そうだねー…妹さんも君には何て反応していいのかわからないんだろうね」

「あの…珠理奈ちゃんが言うような心配もありますか?」

「うーん、今のとこは大丈夫と思う。君はさっき言ったようなスタンスでいていいから」


まだ10代の珠理奈ちゃんが昔の制服を着るのと、成人した俺が着るのとでは違うからな…。

似合わないコスプレになりそうだ。




珠理奈ちゃんの事を話してからふと思った。
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