夏空

□第7章
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「お疲れ様でしたー」

「お疲れ様。明日もよろしくね」

「はい、失礼します」


店長にそう伝えて店の出口から出ようとする。


「宮澤くんっ、明日は通常シフトに入るん?」

「ああ、はい…渡辺さんもでしょ?」

「そうそう。ふふっ、みるきーちゃんと一緒で嬉しいやろー?」

「はいはい」

「めっちゃスルーやん。つまらんわ」



渡辺さんはぷーっと膨らむ。

別に俺を好きなんじゃない。

単にからかっているだけ。



「あ…宮澤くん、今度新人さんの歓迎会をしようと思うの。いつがいい?」


こちらは厨房の高柳さん。


「あー、俺は別にいつでも…皆さんに合わせますので」

「そっかぁ…うん、それじゃまた明日ね!お疲れ様!」



皆に再度挨拶して店を出る。

外に出るとエアコンが効いた店内とは違ってむわっとした熱気。




今年も夏がやってきたなぁ…。

夜空を見上げるけど星はよく見えない。

梅雨は終わったけど…まだ曇っているのかな。





このバイトもずっと続けていてもうかなり長い。

ベテランと言っていいくらいだろうな。

ただ、居心地がいいし、結構バイトを続ける人は多い。

だから顔ぶれもそんなに変わってない。



だけどお客さんが多くなってきたので今までは1階しかなかった店も増築か移転を検討することになった。

それは去年…いや、一昨年だったか?

移転するとしたら、家から遠くなったら嫌だなあと思っていた。

だけど店長は今の場所だからこそお客さんが来るんだ、という結論。

それで今の店の土地と建物を買い取った。

そして今年に入って2階部分を新たに作って、それに伴って新人さんも入れた。

正直今のままでも結構大変だったし、それは助かる!と全員が大賛成。

新たに入った子も個性的だけどうまくやってくれてるようだった。


…正直男も入れて欲しかったけど。

相変わらず力仕事は俺か店長がやらないといけないのは少ししんどいからなぁ。

ただ結構店員さんも可愛い子が多いからそういう下心が漏れてる男ばかりが来たので採用はいなかった。

面接は店長、高柳さん、それと何故か俺。

多分唯一の男性店員ばかりだからだろうけど…確かにひどかったなあ、来た奴ら。





ずーっと今のバイトを続ける気はなかったけど…

店長が理解があって、俺がバイトに来ない間も休み扱いにしててくれて良かった。

そして、それを受け入れてくれた皆にも感謝しかない。

だから良かったのかな。




この辺りも繁華街並みに店も増えた。

夜になっても結構明るい。

今のバイト先があるから、俺もやることが出来たんだ。

何もしないでばかりいると、辛くて辛くて仕方なかったから。







…あれから3年。

俺は大学には行っていない。
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